敵に勝つより味方に勝つ。
大阪桐蔭の強さは
熾烈な「競争原理」にあり

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 やはり、大阪桐蔭が強い。このセンバツでも、2回戦以降は接戦になる場面もありながら、気がつけばしっかり勝ち進んでいた。

 投手陣に確たる"軸"を持たないにも関わらず、たとえリードされても「そのうち挽回するんだろう......」と待っていると、その通り逆襲のキバをむき、あっという間に試合をひっくり返してしまう。

準々決勝で東海大福岡を破り、ベスト4入りを果たした大阪桐蔭ナイン準々決勝で東海大福岡を破り、ベスト4入りを果たした大阪桐蔭ナイン この強さの理由は......「大阪桐蔭」だから。

 わかったような、わからないような理由だが、その言葉に説得力があるのは、大阪桐蔭の戦いぶりは、かつて強かった頃の「PL学園」とダブるからだ。

 前へ進む攻めだけじゃない。今年の大阪桐蔭には、その場でじっと踏みとどまる"強さ"もある。

 たとえば、3月27日の静岡高との試合。初回に奪った6点をすぐにその裏に同点にされて、さらに2回には1点のリードを許してしまう。しかし、そこから6回までしっかり踏みとどまった大阪桐蔭。尻上がりに調子を上げてくる静岡高の左腕・池谷蒼大は、この大会トップクラスの速球の質を持つ快腕だ。

 あれだけのスイングスピードを誇る大阪桐蔭の打者たちが、なかなか外野に飛ばせない。それでもその間、リリーフした徳山壮磨が4イニング静岡打線をノーヒットに抑えてみせる。この投打の"連携"が素晴らしい。

 結局、7回にも静岡高に1点追加を許すが、8、9回に、さすがに疲れの見える池谷蒼大を「待ってました!」と捉え、5点を奪って試合をひっくり返してしまった。踏みとどまって、"勝機"を待てる強さ。まさに横綱相撲だった。

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