長島三奈「覚えていますか。2006年の『代打の神様』今吉晃一くん」 (4ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva   露木聡子●撮影 photo by Tsuyuki Satoko

――もうひとつ前の準々決勝、福知山成美戦(延長10回3-2で勝利)も今吉くんが出場しました。

「こちらも忘れられません。7回に代打で登場。ショートゴロを打ち、一塁にヘッドスライディングして、内野安打にするんです。もう、腰のケガのことがあるから、私は心配で、泣きそうになってしまい......。

 そこで代走が出て、彼がベンチに戻るときの甲子園の拍手が本当に温かくて。決勝の延長15回引き分け再試合のときの球場全体のスタンディングオベーションも感動的でしたが、この場面はいま思い出しても泣きそうになります」

――その後、今吉くんと再会したことはありましたか。

「直接はないのですが、甲子園後、ジャパンの合宿、試合があって鹿児島工からはエースの榎下(陽大)くんが選ばれていたので、『今吉くん、どうしてる?』と聞いたんです。そうしたら、『学校帰り、一緒にラーメン屋に入ったんです。ドアを開けた瞬間、お客さんと店員、全員から拍手が起きて......。あいつ、ラーメンをごちそうになっているんですよ。だから、一緒にいた僕たちもタダで食べられました』と(笑)。

 エースでもない、4番でもない。記録を作ったわけでもない。ひとりの代打が甲子園をひとつにしてしまった。今吉くんのような選手、また出て来てほしいなと思います」

"2006年"という括りがなくても、三奈さんは名バイプレイヤー、鹿児島工・今吉晃一選手を挙げたのではないだろうか。それくらい思い入れたっぷりに語ってくれた。

 2016年の甲子園も佳境。今大会もプロ注目の大物投手が続々と登場したり、歴史的な逆転劇があったり、数々のドラマが生まれている、現在、現地で取材中の三奈さんはどのチームに魅かれ、どの選手に目をかけているだろうか? また、機会を見つけてお話を伺いたいと思う。


長島三奈さんの高校野球特番が来月、放送されます。

~長島三奈が見た甲子園~
  野球が僕にくれたもの

■放送予定 
9月18日(日) 13時55分~15時20分(テレビ朝日系列)
※一部地域をのぞく

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