春夏連覇のキーマン。智弁学園・太田英毅が秘める「圧倒的能力」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 太田を初めて見たのは昨秋の近畿大会。試合開始直後、1番打者として出場していた当時1年生の太田は、いきなりレフトポール際へ滞空時間の長いホームランを放り込んだ。「打って当然」と言わんばかりに颯爽(さっそう)とダイヤモンドを回る姿からは、陽のオーラが発散されていた。坂本勇人(巨人)の姿すら重なる、まさに「画になる男」。今春のセンバツでは次世代のスター候補として、もてはやされるのではないか......。

 しかし、その予想は外れた。

 智弁学園の小坂将商監督は言う。

「気持ちの部分で難しいというか、性格は素直なんですけど......。考えさせちゃダメな選手ですね」

 個人として今ひとつ乗り切れなかったセンバツを終え、春の奈良県大会を戦っている最中、太田の体に異変が起きた。「シンスプリント」と呼ばれる脛骨(けいこつ)の痛みを発症し、約1カ月にわたってプレーができなくなったのだ。この故障を機に、太田はショートからセカンドにコンバートされる。

「復帰してすぐショートは大変だから、とりあえずセカンドに......となって、そのまま今に至っている感じです」

 微笑交じりに語る太田に、セカンドに転向してスローイングの距離感はフィットしているかと聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「もともとスローイングはメッチャ悪いんで(笑)。でも、気持ちは少し楽になりました。失敗を恐れたらダメなので、守備でも甲子園でいいアピールができたらと思います」

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