細山田武史の笑顔。元プロたちが晴れの「都市対抗」で味わう充実感 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 自身もプロに入団する前、新日鐵君津時代に都市対抗予選で打ち込まれ、ベテランの恩田寿之の好リリーフによって救われたという経験がある。「都市対抗の出場権が得られなければ、社内に自分たちの存在価値はありません」と、真顔で語る社会人選手は少なくない。猛烈なプレッシャーと戦いながら、都市対 抗の出場権を勝ち取らなければならない難しさを、渡辺は誰よりも知っている。

 全国制覇を狙った今年の都市対抗では、18日の初戦でJR西日本(広島市)に1対6で敗退。「準備はしていた」と言うものの登板なしに終わり、渡辺は足早に球場を後にした。最後に「16年ぶりの都市対抗で何か変化を感じることはありましたか?」と聞くと少し考え込み、「やっぱり、都市対抗は都市対抗ですね」と笑顔を見せた。

 この日、5番手投手として2回1/3を投げた新人左腕・新ヶ江一聡(しんがえ・かずあき)は、國學院栃木高、國學院大、新日鐵住金かずさマジック(前身は新日鐵君津)と、高校以降の経歴が渡辺と同じという直属の後輩だ。新ヶ江は言う。

「あまり思い通りには投げられませんでしたが、ピンチでも緊張せずに途中から力を出せたと思います。都市対抗は俊介さんの力で来たようなもので、本戦でも経験の場を与えてくださったので、日本選手権の予選では自分の力で何とかしたいと思います」

  新日鐵かずさマジックに勝利したJR西日本は、これが東京ドーム初勝利となった。2年ぶり2回目の出場となった今大会、3番・三塁手に座っているのが藤澤 拓斗。身長174センチ、体重82キロとガッチリした体型の左の強打者だ。藤澤は西濃運輸から中日にドラフト指名されたものの、わずか2年で戦力外通告を 受け、今年からJR西日本に入社。3年ぶりに社会人野球に復帰した。

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