消えゆくPL学園野球部。そのDNAは遠く秋田で芽吹いていた (6ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 そして迎えた春、チームは県大会準優勝、東北大会ベスト8と結果を残す。不安定な投手陣など、まだまだ課題は多いものの、西野は手応えを感じていた。

「秋はスタンドから見ていて、試合中に諦めているように見える部員もいて『オイオイオイ』と思っていました(笑)。でも、春はベンチに入れてもらって、そんな選手は誰ひとりいませんでした」

 そして、夏を直前に控えての監督交代。選手間に動揺が広がりそうなものだが、主将の東内は「ずっと西野先生に指導してもらってきているので、混乱はありません」とキッパリと口にした。

「何を言っても聞かないヤツもいましたし、甲子園を目標にしてきましたけど、全員が同じ意識を持てていたかと言えば、難しいものがありました。でも今は、全員の意思が統一しつつあります。まだ足りない部分もありますが、夏は一球一球に集中して、一戦一戦勝っていきたいです」(東内)

 PL学園時代と違い、プロを狙えるような突出した逸材はいない。それでも――。西野は目の前で練習する選手をひとりひとり厳しく、そして愛おしそうに見つめながら、夏への思いを語った。

「関西からの選手も多いですが、決してエリートではなく『秋田で頑張りたい』とやってきた叩き上げの子たちです。縁があって預かっているので、僕にとっては秋田出身でも関西出身でも関係ない。中学時代の実績も関係ありません。みんなを全力で預かってきましたので、夏は彼らの思いを受け止めて戦おうと思っています」

 PL学園の灯は、その思いを受け継ぐ者がいる限り、消えることはない。

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