大阪桐蔭、異次元の強さを支える「全国屈指の控え部員」 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そう、大阪桐蔭の控えメンバーが「全国屈指の控え選手」であるのと同じように、大阪桐蔭のベンチ入りを逃したメンバーもまた、「全国屈指のベンチ外部員」なのだ。

 「一球同心」という言葉がある。

 大阪桐蔭の初代監督である長沢和雄氏が作った部訓で、部員全員の心をひとつに結集させるという意味合いがある。

 2012年に大阪桐蔭が甲子園春夏連覇を達成した当時、春のセンバツで4番を打っていた選手が、夏の甲子園ではベンチ入りすら逃すということがあった。だが、その選手は灼熱のアルプススタンドで応援団旗を持つという役割をまっとうした。

「チームのために」と言葉にするのは簡単だが、実際に控えメンバーが行動に移すためには、複雑な感情が入り乱れるに違いない。まして大阪桐蔭に集まるような選手は、中学まで「お山の大将」だった選手がほとんどだろう。なぜ、大阪桐蔭の控え部員はチームに対してここまで献身的に尽くすことができるのだろうか。

 選手の兄貴分である橋本翔太郎コーチは、キッパリとこう答えた。

「『勝ちたい』という思いですね。彼らは『勝ちたい』という目的が明確になっているから、ぶれません。『自分が、自分が……』という選手ばかりでは、ひとつになることは難しい。自分を抑えていかないといけないこともあります。そのことに気づいて、自分には何ができるかを考えるからこそ、チームがひとつになれるのだと思います」

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