高校球界の鬼が語る。「今の子は、すぐに結果を求めたがる」
今年の夏まで、横浜高校でコーチを務めた小倉清一郎は身長170センチながら、体重は110キロを超える。でっぷりと腹は出ているが、ひとたびグラウンドに立てばノックバットを振り回し、歯に衣着せぬ厳しい物言いで球児たちと接してきた。
コーチは公式戦にベンチ入りできないが、練習試合ではベンチに入って指示していた。小倉清一郎(手前) しかし指導者人生の晩年、その左目は若き日に打球が当たったことによる網膜剥離と、老年になって患った糖尿病や緑内障の合併症でほとんど見えていない。
「そもそも眼鏡をかけているようでは、選手を指導するにしても、対戦相手を視察するにしても、選手の特徴を完全に把握するには心許ないよね」
高校時代の松坂大輔の語り草となっているのが、小倉のアメリカンノックだ。ライトポールから松坂を走らせ、小倉がレフト線へノックを打つ。フェンス際を走って松坂が捕球すると、今度はライト線へ放つ。松坂だけでなく、プロに進んだ横浜高校の投手陣が必ず通ってきた地獄のような時間だが、ノッカーを務める小倉も、ちょうど捕球できるかどうかのタイミングでライン際へ正確な打球を打たなければならないため、技術が求められるのだ。
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