【高校野球】大阪桐蔭の春夏連覇阻止に挑む注目の高校はここだ! (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

  昨秋、今春の九州王者の神村学園は最速148キロのエース・柿澤貴裕が急成長。春までは力任せに投げていたが、抜くときは抜き、力を入れる場面では入れる投球ができるようになってきた。スピードは「(数字が)出ないウチのガンで148キロですから、甲子園では150キロが出るかもしれませんね」(山本常夫監督)。右打者にもシンカーを投げられるようになり、投球の幅が広がったのも大きい。柿澤は打っても鹿児島大会で3本塁打。準々決勝の鹿児島工戦では、最速148キロを投げる江口昌太から推定140メートルの特大アーチを放った。チームはセンバツ初戦の石巻工戦でショートのトンネルから大量失点したように、守備が課題だったが、コンバートを敢行して6試合5失策と安定。強豪揃いのブロックに入ったが、ここを抜けて勢いに乗れるか注目だ。

 ダークホースには、春の東北王者の聖光学院(福島)を挙げたい。スター選手はおらず、派手さはないが、まとまりや意識の高さは歴代のチームの中でも屈指。福島大会で調子を落としていたエース・岡野祐一郎がここにきて復調してきたのも心強い。ただ、初戦の相手は昨年の覇者・日大三(西東京)。聖光が近年、甲子園で敗れているのは広陵(広島)、沖縄尚学(沖縄)、横浜(神奈川)、興南(沖縄)といった甲子園で優勝経験のある高校ばかり。「また当たってしまった」と斎藤智也監督は苦笑いだったが、「ウチにとって、避けて通れない相手。今までの歩みを証明するチャンス」と前向きにとらえている。初戦がすべてだ。

 この他では、花巻東を破った盛岡大付(岩手)に注目。大谷を打つために野球を180度変え、打撃のチームに変貌。ストレートだけなら下位打線でも150キロ近いスピードに対応する力がある。春からの急成長で一躍ドラフト候補に浮上した佐藤廉は岩手大会で3本塁打を放った。また、大谷からの一発を含む2本塁打の二橋大地も控えており、どこからでも長打の打てる強力打線が完成した。エース左腕の出口心海もプロ注目の逸材で、初の全国でどんなピッチングを披露するのか楽しみだ。投打に好素材が集まった盛岡大付は、春夏通算9度目の甲子園で悲願の初勝利を目指す。

 前年優勝の日大三は斉藤風多、金子凌也と投打の軸が昨夏の日本一を経験。練習試合では県岐阜商(岐阜)、常葉橘(静岡)に大勝するなど潜在能力はある。昨夏のメンバー7人が残る明徳義塾(高知)は練習試合で大阪桐蔭に勝利するなど馬淵史郎監督が手応えを口にする。1992年は星稜(石川)戦で松井秀喜を5敬遠して話題になり、2002年は悲願の全国制覇を達成。10年周期で甲子園では「何か」を起こしており、今年の戦いからも目が離せない。

 大阪桐蔭が史上7校目の春夏連覇を達成するのか。それとも誰も予想できないドラマが用意されているのか。球児たちの熱い戦いは、明日、8月8日に幕を開ける。

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