【高校野球】ドラフト候補が目白押し。
今年の東北は日本一面白い!

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

今年のドラフトで1位指名が確実視されている花巻東のエース・大谷翔平今年のドラフトで1位指名が確実視されている花巻東のエース・大谷翔平 今年の「東北」はすごい! その証拠に、6月に行なわれた東北大会はおそろしく面白かった。この秋、ドラフト1位確実の逸材がいる。来年の全国クラスがいる。個性派がいる。職人がいる。普段は、見過ごされがちな地域だが、今年は違う。ひょっとしたら、いま日本一面白い地域かもしれない。

 今年のドラフトの目玉、花巻東のエース・大谷翔平(3年/193センチ 86キロ/右投左打)がいるから、レベルが上がったのだろうか。特に今年の岩手は、逸材が目白押しだ。

 春の県大会も、東北大会でも花巻東を倒した盛岡大付には、まず左腕のエース・出口心海(=でぐち・しんかい/3年/183センチ 80キロ/左投左打)がドーンと構える。スライダー、フォークを交えながら、130キロ後半の速球をカウント球にも勝負球にも使って、打者のヨミを外してくる。本格派でありながら頭脳派。手の焼ける投手だ。

 その出口を援護する打線は、おそらく東北ナンバーワンの強力打線。いや、全国でもトップクラスと評したほうが現実に近いだろう。1番を打つセカンドの千田新平(3年/172センチ 68キロ/右投左打)は小技も利くが、甘い球なら軽々スタンドに放り込む長打力も兼ね備えた驚異の核弾頭。3番・センターの佐藤廉(3年/183センチ 80キロ/右投右打)と、4番・サードの二橋大地(3年/178センチ 81キロ/右投右打)の長打力は圧巻。佐藤の140メートル級の飛距離と、二橋の破壊力と勝負強さは一見に値する。下級生にも、強肩と強靭なリストを持つショートの望月直也(2年/180センチ 74キロ/右投右打)、狙ってスタンドへ運べる菜花大樹(1年/176センチ 70キロ/右投左打)が6、7番に控え、下位打線にもうひとつの「クリーンアップ」を形成する。

 また、一関学院の鈴木匡哉(3年/178センチ 75キロ/左投左打)と佐野洋樹(3年/180センチ 76キロ/右投右打)のバッテリーだって負けちゃいない。鈴木は成瀬善久(ロッテ)になれる資質を持つ左腕。一方の佐野は、高校時代の城島健司(阪神)のような「オレを見てくれ」的なムードと押しの強さが妙に魅力。強肩と全身の連動でフルスイングできる打撃は、すでにプロのレベルに達している。

 大谷の存在感に隠れがちだが、花巻東にも光る素材は何人もいる。なかでも注目したいのが、ショートを守るリードオフマンの大沢永貴(3年/168センチ 70キロ/右投左打)だ。相手投手の立ち上がりのファーストストライクを強烈にピッチャーに弾き返し、オールローボールで好投を続けていた投手の唯一の失投をスタンドに放り込むなど、試合の流れを一気に変えられる選手だ。

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