【新車のツボ116】トヨタ・プリウス試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文 text by
  • photo by TOYOTA

   新型プリウスはほぼ全身がゼロから新開発されたクルマであって、"TNGA=トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー"と名づけられた骨格構造は、今後5〜10年間のトヨタ主力車種の土台となるべく開発された。

 それは低重心で剛性も高く、そしてダブルウィッシュボーンという複雑で凝ったリアサスペンションを使う。燃費をほとんど悪化させない新機軸の4WDもつくって、最新鋭のリチウムイオンバッテリーを手がけつつ、オーソドックスなニッケル水素バッテリーもあえて新開発した。さらに「カタログ燃費は良くても実燃費はいまいち......とは、もういわせない」と鼻息もあらい。新型プリウスの具体的なツボをいちいちあげたら、本の1〜2冊はすぐに書きあがりそうなほどだ。

 新型プリウスの開発リーダーである豊島浩二氏は「従来のプリウスは走りが良くなかった」、そして「プリウスは日本ではメジャーでも、世界ではまだまだニッチ」とハッキリと認める。「ハイブリッドくさい走りはイヤ」とも断言する。そして、プリウスにとってはいまだに壁の高い欧州でも、真正面から勝負できる走り性能も目指したという。

 冒頭のとおり、現時点ではプロトタイプ(専門用語でいう量産試作車)にチョイ乗りしただけなので、実際に販売される新型プリウスについての断定はできない。ただ、クルマの素質はとても優秀で、基本的な走りのツボをきちんと押さえていることは間違いない。

 プロトタイプ試乗会ではわざわざサーキット走行までメニューに入っていた。プリウスのくせに(失礼!)サーキットでもそこそこカチッと走って、なるほど低重心にへばりつく感覚が濃厚。それでいて、市街地レベルでは"フワピタ"な乗り心地だった。ちなみに、そのときは4WDのほうが乗り心地や手応え感で好印象。非積雪地に住んでいても、値段や用途にあわせて、あえて4WDを考慮する価値もあるかもしれない。

 プリウスは、あの大トヨタの超ビッグネーム商品ゆえに、発売後も賛否両論が巻き起こることは確実。リアルな市場で揉まれれば、改善すべきポイントも出てくるだろう。ただ、新型プリウスはあのトヨタが全身全霊で、世界に誇るべきトヨタとしてつくったことは事実。そして、今後の日本車を、いやおうなく示唆する存在でもある。


  
【スペック】
トヨタ・プリウス A
全長×全幅×全高:4540×1760×1470 mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1360 kg
エンジン:直列4気筒DOHC(1797cc)+モーター
最高出力:98ps/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
変速機:無段階動力分割装置
JC08モード燃費:37.2km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:277万7563円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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