【新車のツボ90】ルノー・カングー試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 また、最新エンジンらしく高回転までスルスルスルと回ってくれるから、自分で変速しないとシフトアップもしないマニュアルであることを利して(?)高回転までグイグイ引っ張れば、走りはさらに活発。またアクセルを踏んでから一瞬の空白があるターボ独特のクセも、慣れてしまえばマニュアル操作でうまくごまかすことも可能。ルノーの6MTは世界でも屈指の小気味いい手応えだし、シフトレバーもドンピシャの位置に鎮座しているので、シフトレバーをコキコキやりながら、1.2リッターターボの潜在能力を自分なりに引き出すだけでも、マジで"運転する悦び"のツボがビンビンに刺激される。

 この最新カングーでも、顔つきのデザインやエンジン以外は従来から基本的に変わっていない......のは事実なのだが、新エンジン+MTによってボディの鼻先は少し軽くなったほか、新しい上級グレードの"ゼン"を従来の標準モデルと比較すると、ステアリングが革巻きになって、シート表皮が柔らかなジャージ素材となり、タイヤがワングレード上級のプレミアムタイヤ(サイズは変わらず)になる。これらはなんともマニアックで細かい仕様変更でしかないが、実効果は絶大だ。

 第35回でも書いたように、カングーはそもそも"世界でもっとも走りがいい背高箱グルマ"の1台である。そんなカングーが最新エンジンのおかげでさらに静かになって、わずかに軽くなった鼻先でステアリングの利きはより素直に滑らかになった。また"革巻きステアリング、ジャージシート、プレミアムタイヤ"という3点セットが、クルマの肌触りを飛躍的に高級にして、しかも乗り心地にバッチリ効いている。とくにプレミアムタイヤは、従来のカングーでわずかに気になっていた乗り心地のざらつき、ごくごくわずかな反応の鈍さ......を、タメ息がでるほど見事に霧散させた。根本的な走りの良さはこれまでどおりだが、タイヤひとつで、深い部分の味わいがこれだけ変わるとは......。モータースポーツではタイヤが勝負の分かれめとなることが多いが、カングーを街中で転がすだけでも"クルマって、やっぱタイヤだなあ"というツボを、しみじみ実感したりもするのだ。

 これまでのカングーの走りが"絶品にして傑作"だとすれば、新しい1.2リッターのカングーは"超絶品にして歴史的名作"とでも表現するしかない。運転好きの走りマニアなら、こりゃもう、うっとりホレボレする美味グルマである。

【スペック】
ルノー・カングー・ゼンMT
全長×全幅×全高:4280×1830×1810mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1430kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1197cc
最高出力:115ps/4500rpm
最大トルク:190Nm/2000rpm
変速機:6MT
JC08モード燃費:――km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:241.5万円

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