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【新車のツボ56】
マツダ・ロードスター・ソフトトップ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ロードスターはタイヤもさほど高性能ではないし、さすがに25年もの経験から「ちょうどいいサジ加減」みたいなものが身体に染みついている。だから、まったく神経質でも過敏でもないのだが、ステアリングを切った瞬間から、クルマは運転する自分を中心として曲がる。まるで自分がコマの軸になったみたいなクリンクリンとした操縦感覚を味わうと、あの86ですら「どっこいしょ!」という長いものを振り回す錯覚に陥るほどである。

 さらに60年代のスポーツカーのツボに徹底しているロードスターは、ボディそのものが天地に薄い。昨今は四方が高いカベで囲まれた室内環境のクルマが多いが、ロードスターはシートに対してボディ全体が低く、ドア上端はヒジを乗せるのに笑っちゃうほどピッタリとした位置にある。今どき"ドアヒジ"がこれほど似合うクルマもほかにない。それに、天地に薄いボディは単にヒジを乗せやすいだけでなく、オープンで走ると開放感もバツグン。体感速度は実速以上......という古典スポーツカーのツボを、ロードスターはしっかりと押さえている。

 現在のマツダ・ロードスターには屋根のタイプが2種類あり、写真のソフトトップ型(手動開閉)のほかに、電動格納ハードトップ型も用意される。で、みなさんのご想像どおり、現在の日本での売れ筋は圧倒的に電動ハードトップ型のほうである。まあ、快適性や利便性、セキュリティを考えれば、ハードトップのほうが便利で安心であることは否定しない。

 しかし、この『新車のツボ』でも以前(第43回の日産フェアレディZロードスター)書いたように、ロードスターはあくまでオープン状態が基本形。よほどの悪天候でもないかぎり、屋根を閉めて走るのは無粋のきわみなのである。その意味でいうと、ソフトトップこそロードスターの正統なツボである。

 だいたい、こんな2人乗りスポーツカーを選んだ時点で、クルマに興味のない周囲の家族・知人には「ちょっとしたお使いにも不自由な、ツブシのきかないクルマに乗るオタク」の烙印を押される可能性が非常に高い。どうせそうであれば、さっさと開き直るべし。ちょっとばかりヤセ我慢しても、とことんスタイルとツボにこだわるのが正しいロードスター乗りというものだ。

 ......いや、そうはいっても、今のソフトトップはとてもよくできているから、屋根を閉めれば十二分に快適。実際にはヤセ我慢などまったく不要なので心配はいらない。

【スペック】
マツダ・ロードスター・ソフトトップRS
全長×全幅×全高:4020×1720×1245mm
ホイールベース:2330mm
車両重量:1120kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1998cc
最高出力:170ps/7000rpm
最大トルク:199Nm/5000rpm
変速機:6MT
JC08モード燃費:11.8km/L
乗車定員:2名
車両本体価格:260.0万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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