【新車のツボ45】ルノー・トゥインゴ・ゴルディーニRS 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 どちらもボディサイズはあのホンダ・フィットよりさらに小さい。ゴルフと比較すると1.5~2クラス下級。エンジンはともに1.6リッターDOHC(オヤジは"テンロク・ツインカム"と呼んだほうが気分だ)で、専用開発された本格スポーツエンジンだ。最近流行のエコ技術はとくになし(笑)。このクルマに乗ると、私のような子供のころからクルマ好きだったオヤジは、感涙にむせぶ。

 速さはたいしたことない。十分にパワフルだが、ギア選びを間違えると、短気なオートマ大型ミニバンに追い立てられることもある。だが、公道でも気がねなくアクセル全開にできて、カキーンと天井まで吹け上がる排気音が気軽に聴けるのはたまらない。

 サスペンションやタイヤもすべて専用の本格仕立てだが、もとのサイズに余裕がないので限界は高くなく、首都高の合流カーブでも、ステアリング任せでは曲がれない。タイヤのグリップをきちんと先読みしながら、右足で前後の荷重移動もきちんと意識しないと、きれいに走ってくれないのだ。昨今はステアリングまかせでもとんでもないスピードで曲がれるクルマが多いが、トゥインゴなら現実的なスピードで"スポーツドライビングの機微"がリアルな実感として味わえて、そして運転の基本が楽しく安全に学べる。

 それは単純に「性能が低いから楽しい」という意味ではない。そのシフトフィールはカキーンと鋭く、エンジンのトップエンドまで回して初めて、その美味しい領域がきれいに連結されるギア比になっている。ステアリングやシートから伝わる接地感は、路面を素手で触って、パンツ一丁でアスファルトに座っているかのようだ。いつどこで乗っても「今日も揉んでやったぜ!」と、これほどスカッとするクルマを私はほかに知らない。

 ちなみに、このクルマの車名に付されている"ゴルディーニ"とは、1960年代から70年代に大活躍したルノー直系レーシングチューナーの名前である。特徴的なオフセットストライプはゴルディーニのトレードマーク。そう、このクルマは徹底的にオヤジのツボをくすぐるようにできている。

 そうだとしても、これを好き者オヤジの青春プレイバック商品......に閉じ込めておくのは、じつにもったいない。老若男女を問わず、とにかく一度は乗ってほしい。本物の"ホットハッチ"がいかに楽しく溜飲の下がるクルマかが、わかるはずである。


【スペック】
ルノー・トゥインゴ・ゴルディーニRS
全長×全幅×全高:3700×1690×1460mm
ホイールベース:2365mm
車両重量:1090kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1598cc
最高出力:134ps/6750rpm
最大トルク:160Nm/4400rpm
変速機:5MT
JC08モード燃費:――km/L
乗車定員:4名
車両本体価格:245万円

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