【新車のツボ46】日産NV350キャラバン 試乗レポート
NV350キャラバンは国内用バンとしては最大クラスで、スーパーロングやワイドボディ、窓なしやバス仕様......など、用途に応じていろんなモデルが用意されているが、基本的には5ナンバー枠(全長4.7×全幅1.7m未満)におさまる。だから、日本のどこにいっても困ることはないし、普通免許で乗れる。それでありながら、最大荷室長は3mに達する......のだから、トラックを除けば"日本で最も空間効率の高いクルマ"といっていい。
この種のビジネスバンは日本中で膨大な台数が走っている。しかし、現在の日本にこのクラスのクルマは2種類しかない。ひとつがこのNV350キャラバン(以下キャラバン)であり、もうひとつがトヨタ・ハイエース/レジアスエース(以下ハイエース)である。
かつては販売成績で五分五分の争いをしてきた2台も、2004年に現行ハイエースが出てからはキャラバンは完全敗北となってしまった。ここ数年のハイエースのシェアは9割(!)を超えていたという。キャラバンが負けた理由は明確だ。当時導入された衝突安全基準のためにノーズを伸ばしたことで、標準モデルの最大荷室長が3mを割ってしまったこと、そして同じ理由で多くの人に"カッコよくない"と思われてしまったからだ。
ビジネスバンは「ウチの仕事で使う○○が載せられない」となれば、もはやその時点でアウト。どんなにカッコよくて安くても買ってもらえない。また、このクラスは企業の社用車としてだけでななく、自分の腕と器量で稼ぐ一匹狼の自営業者や職人さんのニーズもあるから、取引先に"デキる男(もちろん女でもいいが)"を演出できるかも重要。さらにいえば、釣りやレーシングカート、二輪レース、大型ラジコンなど、この世には"このクルマでないと、たしなめない趣味"も厳然と存在する。だから、このジャンルで"荷室長とデザイン"は絶対に落とせないキモなのだ。
というわけで"打倒ハイエース!"を掲げて11年ぶりに刷新されたNV350キャラバンだが、ハッキリいって、見た目はハイエースとウリふたつ。シツコイようだが、キャラバンとハイエースは「やるか、やられるか?」であり、どっちが真似しただの、デザインセンスが滑った転んだ......なんて甘っちょろい文化論(?)ははすでに超越した世界なのだ。新しいキャラバンはこうしてハイエースそっくりになったうえで、派手なクロームグリルなどで強い自己主張を追加している。
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著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/