「相手の逆を取る」華麗な足ワザテクニックとは。日本の名ドリブラーが実演・解説 (2ページ目)
先手を取って相手を動かす
最初のチアゴ・アルカンタラの「ナメシザーズ」は、シンプルながら非常に効果的な逆を取るフェイントだと思います。
シュートフェイントを入れて相手をブロックに動かし、その振り足の足裏でボールを動かして逆を取る。フェイントから逆を取るまでが、非常にコンパクトで素早いので、相手はそれだけで置き去りにされてしまいます。
ヴィニシウス・ジュニオールの「股抜き」は、個人的にすごく好きなプレーで、ロナウジーニョやネイマールなど、ブラジル人のテクニシャンがよくやるプレーです。遊びのなかであればまだいいですが、これを実際に練習や試合のなかでやろうと思うと、ものすごく難易度の高いプレーになります。
ポイントは、相手を背負いながらターンをして股を抜く点。相手をかなり自分のほうへ食いつかせることになります。食いつかせないと、股を抜いたあとに相手の裏へ抜け出すのが難しくなります。
ただ、十分に引きつけて背負ってもスピードがなければ抜ききるのは簡単ではありません。こういうときに南米の選手は腕や手を使うのが非常にうまいんです。
股を抜いた瞬間に相手をうまく抑えて、ボールと相手の間に自分の体を入れます。これで相手が押し返してくるパワーを利用して、前に出て加速できる。これは南米選手特有のプレーと言えるかもしれません。
僕も試合のなかでチャレンジすることはありますが、ほぼ成功しません。人生でも1、2回あるかないか、それくらいだと思います。それをいとも簡単にやってしまうヴィニシウスはさすがですね。
そして、アブデッサマド・エザルゾウリの「スプリングターン&アウト」。これは、僕も試合のなかでよくやるプレーのひとつです。
ボールを足裏で転がして、すぐアウトサイドに切り返します。さらにそのボールをまたいで、もう一度逆方向に運んで相手の逆を取るプレーです。
このプレーはこちらが先手で相手を動かし、相手が「まずい、逆を取られた」と焦ったところでさらに逆を突くことを意識しています。
こちらから先手で相手を動かして、逆を取るこの記事に関連する写真を見る 試合のなかでは、1回の逆を取るプレーだけでは完全に相手を抜き去るのが難しい場面もあります。相手のリアクションを感じながら、相手の意識がどちらに向いたかを察知してさらに逆を取るというのがポイントです。そこを頭に置きながらトラップなど、ファーストタッチを意識するといいと思います。
どのプレーにも共通して言えることですが、常に先手を取ることを考えて、相手主導にならないように意識して逆を取る駆け引きを楽しんでみてください。
楠神順平
くすかみ・じゅんぺい/1987年8月27日生まれ、滋賀県愛知郡出身。2005年度、野洲高校3年時に、第84回全国高校サッカー選手権大会で滋賀県勢初の全国優勝を果たす。同志社大学を経て2010年に川崎フロンターレに入団。スキルフルなボールテクニックで注目を集める。2013年にセレッソ大阪。2016年にはサガン鳥栖でプレー。2016年7月にオーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズへ。2018年にはJリーグへ戻り清水エスパルス、モンテディオ山形でプレーした。Jリーグ通算155試合出場、13得点。2020年から舞台を南葛SC(関東リーグ)に移し、Jリーグ入りを目指すチームでプレーしている。
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