声優・梶 裕貴が始球式イップスを振り払うノーバン投球 『忘却バッテリー』で自身が演じる山田太郎との共通点を語る (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【山田太郎はチームを結びつける"職人"「尊敬できる」】

 この日の試合では、現在放送中のTVアニメ『忘却バッテリー』(テレ東系列)とのコラボイベントを開催。同作で山田太郎 役を務める梶さんは、セレモニアルピッチ以外にも、試合開始前のスタメン発表のアナウンスや、イニング間のバズーカタイム、試合終了後のスペシャルトークショーなど、1日を通してベルーナドームの雰囲気を盛り上げた。


スタメン発表アナウンスの大役も務めた TVアニメ『忘却バッテリー』は、「少年ジャンプ+」(集英社)にて連載中の高校野球を題材にしたマンガが原作。中学時代に怪物バッテリーと恐れられながらも、野球無名校へと進学した捕手・要圭が記憶を失っている、という展開から幕を開ける。一人ひとりのキャラクターの個性が強く、ギャグとシリアスが絶妙なバランスで盛り込まれているのが大きな魅力だ。

 この作品について、梶さんは「序盤はとくにギャグ要素が強くて(笑)。もちろん、それも『忘却バッテリー』の魅力なんですけど、難しいことを考えずに笑いながら観ていると、気づけばキャラクターたちを応援している自分がいて。徐々にちゃんと野球をしてくれるようになっていって、そこからの展開には、もう誰もが夢中になってしまうかと」と、チームやキャラクターが成長していく過程が見どころだと語る。

 また、「要圭が記憶を失くしているということもあって、ポジションのことだったり、それぞれの役割だったり、しっかりと言葉にして説明してくれるんですよね。ですので、野球初心者の方にとっても、入り口としてすごく踏み込みやすい作品になっています」と"忘却"が読者・視聴者への配慮につながっているとも。

 梶さんが演じる山田太郎は、本作の語り手兼ツッコミ役ではあるが、性格は温厚で常識的な、いわゆる"普通の子"という印象も受ける。演技を通しても「自分の中で、わざわざギアを変える必要がないというか、自然にやれる役です」という。でも、だからこそ「山田太郎 役で合格できたのは嬉しかったですね。ほかのキャストも、これ以上ないっていうぐらい皆さんぴったりで。現場も本当に野球部の部室みたいな感じで和気あいあいとしているんですよ」と、自然体で臨んでいるアフレコ現場の空気を振り返った。

 本作の原作者・みかわ絵子先生からも「梶さんがヤマ(山田太郎の愛称)で本当によかったです」と喜びの声をもらったという。この言葉に「声優として、本当に嬉しかった」と感慨深げな様子だった。

 作中で山田太郎は一人ひとりの癖が強い小手指高校野球部にバランスを与えている。彼の存在がなければ、『忘却バッテリー』という作品は成り立たない。それはアフレコ現場での梶さんの姿勢とも重なる部分があるという。

 「野球はチームスポーツ。ひとりだけが優れていても絶対に勝てないわけで。それを結びつける、軸となるような人物は絶対に必要ですし、それが山田太郎だと思っています。まさにアフレコも、ひとりだけ頑張ってもどうしようもない総合芸術。みんなで作るものなんですよね。僕自身も、現場や役どころにもよりますけど、自分のお芝居をきっちりするのは当然のこととして、その場にいる誰もがその作品づくりを楽しめるような環境であってほしい。そのためにどう動けばいいのか、というのを、すごく考えるタイプなので、彼の立ち振る舞いにはすごく共感できるし、尊敬できます。自分もそういう職人でありたい」と語る。山田太郎の姿勢に共感できるという梶さん

2 / 3

厳選ピックアップ

このページのトップに戻る