「チャットGPT時代に必要なものとは?」 身につけておきたい「投資家的素養」 (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

 その点、投資家は日々決断を下し、日々リスクを取っている。投資家ではなく経営者という言葉に置き換えてもいいかもしれないね。生成AIが普及すればするほど、会社員に求められる素養は、決断し、リスクを取ることに絞り込まれていくんだ。

 でも、『決断してリスクを取る』と言うのは簡単だけど、実行するのはなかなか大変だと思うよ。人間って、そもそも積極的にリスクを取りには行きたがらない性質を持っているし、できるだけ休んでいたいと思う生物でしょう。だから日々、決断してリスクを取れる人間というのは相当、無理をして生きていることになる。

 結果として何が起こるかというと、経済的には二極化じゃないかな。決断してリスクを取れる人は、取ったリスクに見合った報酬を得る可能性に恵まれる。一方、数の上では圧倒的に多い、リスクを取らない人たちは、おそらく失業のリスクに直面することになる。それも、かなりの数に上る恐れがあるよね。

 で、そうなった時のセーフティネットとしては、ベーシックインカムの議論が出てくるかもしれないね」

由紀「それディストピアですか?」
鈴木「ベーシックインカムって何ですか?」

奥野「ベーシックインカムというのは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民を対象にして、一律・無条件で現金を給付するしくみのことだよ。たとえば国民1人につき年間200万円を支給するって感じかな。その代わり、現行の公的年金などの社会保障はなくなる可能性がある。

 たとえばさっき言ったようにチャットGPTがビジネスの世界に普及すると、会社にとって必要性のない人が増えてくる。そういう人はリストラされるのだけど、失業者が世の中に溢れると、今度は社会不安が高まってしまう。だから、ベーシックインカムによって最低限、生活できるお金を政府が支給する。

 確かに社会が失業者だらけになるのはディストピアかもしれないけど、ベーシックインカムを受け取って、贅沢はできないものの、働かずにのんびり趣味でも楽しみなが生活できると考えれば、ひょっとするとこれはユートピアなのかも知れない。この仕組みがちゃんと回れば、の話だけどね。

 ただしもうひとつ。ベーシックインカムの議論をするならば、『小さな政府』にしなければならない。

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