大谷翔平、久保建英...スポーツ選手が象徴する「海外進出が今の日本で合理的な理由」
この記事に関連する写真を見る奥野一成のマネー&スポーツ講座(7)~海外進出のすすめ
前回は奥野一成先生から、プロ野球の球団名の変遷と、日本経済の関係について教わった3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と、新入部員の野球小僧・鈴木一郎。商品やCMを通じて、何となく知っている企業にも浮き沈みがあることを知ったふたりだった。
3年生の由紀は大学受験を控えていた。ただ、ふだんから成績優秀な由紀に焦った様子はない。受験戦争とも呼ばれたひと昔前のような激烈な競争が薄らいだのは、ペーパーテスト一本槍だった大学入学の方法が多様化したからだろう。各種の推薦などもあり、入試の前に合格を決める生徒も多いのだ。
野球部の練習が終わると、そんな由紀と、大学受験のことなんて考えたこともない鈴木が、野球部顧問で、家庭科では投資について教えている奥野先生に、相談とも言えない相談を持ちかけていた。
由紀「私、普通にいくつかの大学を受験して、志望校に入れればそれでいいと思ってたんです」
鈴木「それのどこがいけないの?」
由紀「実は同級生に、海外の大学に留学するから日本での入試はパスするというコがいて、そういう選択肢もあるんだと思ったら、私もこのまま行ける大学に行くというだけでいいのかな、と思うようになって......」
鈴木「海外挑戦......いい響きだよね」
海外挑戦といえば象徴的なのがスポーツ界。2022年にメジャーリーグでプレーした日本人選手は大谷翔平をはじめ9人。そしてサッカーでは欧州の各国でプレーする日本人が50人以上いると言われている。
鈴木「だから、日本でトップになった選手が海外に行くものだと思ってたら、そういうことでもないのだよね。50人以上いたら、そのうち30人ぐらいは日本代表にも選ばれないということだから」
由紀「なぜみんな、海外を目指すのでしょう?」
奥野「日本人選手が海外でプレーしようとする基本的なモチベーションは、単に箔がつくとか、あるいはスキルアップできるとか、単純に高い契約金がもらえるということではない何かがあるとは思うね。
鈴木君が指摘したように、サッカーで言えば、日本代表に選ばれていないような選手でも海外を目指すわけだし、トップクラスの選手でなければ、契約金なんておそらく微々たるものだと思うよ。それでも海外を目指すのだから、それはもうお金以外の何かを求めているとしか考えようがない」
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