「部活動の地域移行」でスポーツはどうなる? 山積する教育現場の問題を考える

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

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 前回は奥野一成先生から、スポーツ中継の変化を経済の観点から見るとどうなるか、話を聞いた3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と、新入部員の野球小僧・鈴木一郎。ふだんの生活と、とっつきにくい経済がいかに密接に結びついているか、あらためて実感したのだった。

 家庭科では生徒に投資について教えている奥野先生は、野球の専門家というわけではないが、野球への愛情があることがよくわかるため、集英高校野球部顧問として生徒たちに慕われていた。授業が終わり、今日の練習について奥野先生と由紀が話しているところへ、鈴木が駆け込んできた。

鈴木「大変だ、大変だ!」
由紀「今日はまた何をあわてているの?」
鈴木「僕の卒業した中学の野球部がなくなっちゃうかもしれないんだって」
由紀「ほんとなの? どういうこと?」
鈴木「学校で部活をやれなくなるんだって」
奥野「それってもしかして、部活の地域移行のことかな?」
鈴木「それそれ! 学校じゃなくて、どっか別のところでやれということでしょう」

 部活の地域移行とは、公立中学校の部活指導が、民間スポーツ団体や地域の人材に委ねられるようになること。2023年度から25年度末までの3年間を「改革集中期間」とし、まず休日の部活動から段階的に地域移行するという。

奥野「だから当分、平日は今までどおり学校で部活が行なわれるはずだ。中学の野球部自体がなくなることはないと思うよ」
由紀「なんで地域移行することになったんですか」
奥野「目的は、少子化による廃部で子どもの選択肢が減っている実情や、教員の長時間労働の課題の解決などを目指すためだと言われているけどね」
由紀「顧問の先生になると、確かに大変ですよね。でも何かもっといい方法はないのかしら?」

奥野「自分で言うのもなんだけど、学校の先生もいろいろ大変なのだよ。

 この『部活地域移行』というのは、6月6日にスポーツ庁が『運動部活動の地域移行に関する検討会議提言』を公表したところから話題になったのだけれども、公立中学校の休日に行なわれる運動部の活動は、教師ではなく、地域のスポーツクラブなどが指導し、その際には複数の学校が集まって合同練習をしてもいい、ということなんだ。

 もちろん、これまでも近隣で仲のいい学校同士で合同練習することはあったけれども、基本的にそれは臨時的なのだったし、従来は原則的には学校単位で部活動が行なわれていたから、休日限定とはいえ、定期的に合同練習することになるのは、大きな変化だよね」

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