地上波によるメジャースポーツの中継に危機。ライブの価値が上がる一方で価値が下がっていきそうなコンテンツとは? (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

民放テレビ局が置かれている厳しい状況
                         
奥野「聞くところによると、この時に要求されたテレビの放映権料は10億円ぐらいだったらしいね。サッカー1試合の時間が2時間として、そこに10億円のCMを打てるスポンサーが見つからなかった。だからテレビでは放映できなかった。そういう話です。

 10億円という放映権料が、どれだけ吹っかけられたものなのかは、わからないのだけれども、今まで、それでも何とか払ってくれるスポンサーが見つかって、テレビで試合を放映できたのは、日本企業がそれだけ儲かっていたからというのが、ひとつめの理由として考えられる。

 それとともに、それだけのお金を払って広告宣伝を打ったとしても、十分に回収できるだけのお客さんを取ることができたということもあるだろうね。ただ、もうそれが通用しなくなってしまった。当然、1社提供ではないだろうから、複数社で10億円を割るとしても、試合が放送されている2時間の間にCMで会社名や製品名を連呼したとしても、『お、この製品を買ってみよう』という意欲につながらない。

 そもそもテレビはレガシーメディアだから、見る人自体が少なくなっている。

 スポンサー企業の広告担当者もそのことがわかっているから、いくら広告代理店やテレビ局の営業がお願いセールスをしても、乗ってこなくなってしまったというわけ」
     
鈴木「確かに、最近はテレビってあまり見ないな~」
由紀「YouTubeのほうが話題になるわね」
    
奥野「これは前回も言ったことなんだけど、日本人を相手に商売をしても、もうダメだということなんです。現在の日本の総人口は、約1億2800万人。それがこれからどんどん減っていく。しかも日本は成熟経済であり、ほとんどのモノが揃っているから、消費者も『あれがほしい、これがほしい』とはならない。

 そのうえ君たちみたいに、若い人たちがテレビを見なくなっているとなれば、今のエスタブリッシュされた企業が広告を出す理由なんて、もうどこにもない。そりゃ、10億円なんて大金、複数のスポンサーで割るとしても、ポンと出してくれるところを見つけるのは、相当に難しいだろうね。それに、日本企業もそれほど儲かっているわけではないので、広告という単なる売名行為のために多額の資金を投じるだけの余裕がないという、非常に現実的な理由もあるんだと思うよ。
      
鈴木「じゃあ、なぜDAZNは高いお金を支払って、日本がカタールW杯出場を決めたオーストラリア予選を配信したのですか」

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