スポーツ飲料もスポーツ用品も...値上がりの原因と、そこから得られる人生の指針 (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

円安になると物価が上がる理由
  
奥野「そうだね。経済や為替のことを知らないと、そういう勘違いをしてしまうかもしれないね。

 よく考えてみて。1ドル=125円が140円になると、1個1ドルのモノを買うのに必要な円建てのお金は、125円から140円になってしまう。より高いお金を払わないと、同じ1ドルのモノが買えなくなるんだから、その分だけ円の価値が下がった、つまり円安というわけ。

 最近、物価上昇のニュースがいろいろなところから聞こえてくるのは、このように円安が進んだ結果、海外から輸入しているさまざまなモノの値段が上昇しているからなんだ。特に日本のように、原油などのエネルギーだけでなく、食糧も輸入している国は、円安が進むと、さまざまなモノの値段が上がってしまうんだよ」
     
由紀「あまり覚えていないんだけど、昔、円高が進んだとか言って、不況になるとか大騒ぎしていたような......。でも、今は円安で大騒ぎですよね。これって、どういうことなんですか?」
     
奥野「昔の日本は、日本国内で自動車や家電製品を作り、それを海外に輸出して収入を得ていたんだ。そういう経済構造で円高が進むと、かなり困ったことになる。

 1個1ドルで輸出していたモノがあるとしようか。もし、1ドル=100円から75円まで円高が進んだら、1個あたりの円建ての売上は、100円から75円に減ってしまう。

 もし売上を減らしたくなかったら、ドル建ての値段を上げなければならないのだけど、そうすると日本製品の価格競争力が落ちてしまう。だから、日本が『輸出大国』なんて言われていた時代は、『円高で不況になる』などと大騒ぎになったんだ。

 でも、今の日本はもう、まったくと言っていいほど輸出大国ではない。それはGDPに占める輸出額、いわゆる『輸出依存度』が15%程度しかないことからもわかるだろう。それは日本が先進国になった以上、当然のことなんだ。

 先進国として国が豊かになれば、そこで働く人の給料は上がっていくし、土地やさまざまなモノの値段は上がっていく。そうなると、日本国内でモノをつくり、世界中に輸出するというビジネスモデルはだんだんと成り立ちにくくなる。

 それはそうだよね。だって、日本でモノをつくるコストが上がってしまうのだから。それなら、日本国内でつくるのではなく、もっと安いコストで生産できる国に工場を設け、そこでモノづくりをしようと考えるでしょ。つまり、国内でモノを大量生産し、それを海外に輸出して稼ぐというのは、ASEAN諸国やインドなどのような新興国において成り立つビジネスモデルなんだ」
        
由紀「つまり、今の日本は輸出よりも輸入が多いから、円安が進むと一気にモノの値段が上がるってことですね」

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