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伊原六花の人生を変えた高校入学の分岐点。ダンスのために選んだ道に「奇跡」があった (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • 佐野隆●撮影 photo by Sano Takashi

この記事に関連する写真を見る 勇気を振りしぼり飛び乗った、夢に向かって走る列車。その結果至った現在地を、彼女は「好きなことの延長線上」だと規定した。

 本人の資質とソーシャルメディアによって編まれた、まさに令和のシンデレラストーリー。その物語の起点には、懐かしくも温かな夢の世界への憧れがあった。

「子どものころはそれこそ、人魚姫やピーターパンなどワクワクする物語が大好きでした」

 幼少期の思い出を語る時、彼女は当時に戻ったかのように無邪気な笑みをこぼす。

 初めてミュージカルを見た12歳の時は、「本のなかの世界を現実にできるなんて!」と驚き、一瞬で魅せられた。4歳からバレエを習っていた少女は、この日からミュージカルの世界へと足を踏み入れることになる。

 伊原がバレエを始めたのは、2歳年長の姉がきっかけだった。

「お姉ちゃんがやっていることは自分もできるもん! と思っていました」

 大好きな姉に追いつこうと背伸びしていた幼い日を想い、彼女は恥ずかしそうに笑った。

 ダンスの世界への入り口が姉なら、ミュージカルを知るきっかけは友だちの先輩が立つステージを見に行ったことである。ミュージカルの教室に通うようになって以来、彼女は大好きな絵本や小説の世界を、自らの身体で表現していった。

「子どものころは『青い鳥』が大好きでした。初めて演じたミュージカルだったということもあり、とても印象に残っています。

 そのあとだと『星の王子さま』が好きでした。それもミュージカルでやったんです。わたしが演じた役は、作家のサン=テグジュペリの投影だと言われる"僕"。ものすごく難しい作品ですが、作中の言葉が大好きなんです。『大切なことは、目に見えない』とか。

 悲しいところもあって、でも本当に漠然としていますが、わたしはこの本に出会えてよかったなーと思ったんです。たまに読み直すと、年齢を重ねるごとに感じることが違ったり、こういう意味だったんだと気づいたり。読み終わったあとに余韻が残る物語が大好きです」

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