「パリ五輪ではメダルが獲れるという自信がついたのでは」東京五輪で玉井陸斗が示した素質の高さと今後の課題 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

【14歳とは思えない精神力】

 18人が通過できる予選は、1本目の407C(後ろ踏切前宙返り3回転半抱え型)をしっかり決めたあと、4本中3本で大きなミスをして、5本終了時点で21位と準決勝進出が危うくなった。だが自信を持つ5255Bで臨んだラストの6本目は、ノースプラッシュの91.80点を出し、持ち直したものの、374.25点で16位というヒヤヒヤのスタートだった。

しかし準決勝は大きなミスを2種目だけに抑え、8位で決勝へ進出。12人で戦う決勝ではミスがあったものの、最後の5255Bを堅実に決めて7位を確保した。この五輪での経験を玉井は前向きに振り返った。

「7位でしたが、この大会で今できる最大の演技はできたと思います。5本目に失敗した307C(前逆宙返り3回転半抱え型)は、予選と準決勝で回転が足りない落ち方をしていたので、それを修正しようと思って回転しすぎるくらいの意識で頑張った結果なので、悔しいとか悔いが残るというのはないです。4本目まではいい流れで、5本目は悪い演技になってしまいましたが、落ち込むというより、思いきりやった結果だと捉えています」

 また、予選から準決勝、決勝と調子を上げられたことについては、「五輪という舞台にだいぶ慣れてきたからなのではないか」と答え、度胸を見せる。そして580点台で金と銀を獲得した中国選手や、548.25点で銅メダルのイギリスの選手との差についてはこう分析していた。

「飛び出しで踏み切った時の姿勢がきれいだからこそ、入水がうまくいくのだと思う。自分はそこがまだまだなので、パリ五輪まであと3年しかないですが、近づけるように頑張りたいです」

 玉井の予選落ちはまったく考えていなかったという馬淵コーチは、予選はハラハラドしたと苦笑する。だが毎回修正を重ね、予選より準決勝、準決勝より決勝と安定していったのは大きな収穫だった。

「14歳でありながら、決勝であの6種目を飛べるのは、自分の経験上でもなかなか想像がつかないことです。難しい技、雰囲気、プレッシャーなど......、なかなか落ち着くことすら難しいと思いますが、まだ海外経験も少ないなかでよく集中し、修正しながら最後まで自分の演技をまとめて、入賞できたと思います。本人も次のパリ五輪ではメダルが獲れるという自信がついたのではないかと思います」

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