池江璃花子、笑顔の8日間。4冠達成で「能力はひとつも錆びていない」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

 そのレースでは、最後の数mで腕が動かなくなっていたと明かした池江だったが、決勝では、後半ターンしてから抜け出すとそのまま逃げ切って、メドレーリレー派遣標準(57秒92)を上回る57秒77で優勝してリレー枠での五輪代表を内定した。

 池江は、涙が溢れてしばらくプールから上がれなかったが、競技を再開して誰にも勝てなかった時のことや、100mバタフライを最初に泳いだ時に「自分がこの種目で活躍できるのがまだ先のことなんだろうな」と考えたことを思い出していたという。

 日本代表の平井伯昌監督は「準決勝まではラストで腕が動かなくなっていたが、決勝で最後は無理をして掻かず、うまく伸びでタッチしたところは本当にすごいなと思った。彼女の力を出し切る能力はひとつも錆びていない」と評価。彼女の勝負勘や勝ちに対する執念が、派遣標準突破という結果につながった。

 池江の隣のレーンで泳いでいた同じ大学で1歳年上の長谷川涼香(日本大学)は、今回の100mバタフライをランキング1位で臨み、メドレーリレー代表の有力候補だった。だが、ゴール直後、池江に敗れたにも関わらず長谷川は、池江の優勝を満面の笑みで祝福していた。

 長谷川は3日後の200mで代表内定を果たすと、池江への気持ちを「一緒に五輪に行けるのがうれしい。100mバタフライはふたりでワンツーになれたのがうれしかった」とふりかえった。誰もが女子のエースである池江の復活を待ち望んでいたのだ。

 400mフリーリレーの選考も兼ねる100m自由形で池江は、100mバタフライ優勝での勢いそのままに、予選も準決勝も1位通過。特に準決勝の前半は予選より0秒75遅い27秒22で7位通過だったものの、折り返してから柔らかい泳ぎでスルスルとトップに立った。

「準決勝は練習ととらえ、前半を流して後半上げるというプランで、予選と同じくらいのタイムで泳げればいいと思っていた」と平然と話す。平井監督も「以前の調子が上がっている時によくやっていたレースを、久しぶりに見られてよかった」と舌を巻いた。

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