松田丈志が提言。「世界の進化は早い。日本も成長スピードを上げる必要あり」 (2ページ目)

  • 松田丈志●文・写真 text & photo by Matsuda Takeshi


 日本の中心選手である萩野公介と瀬戸大也が挑んだ200m、400m個人メドレーではいずれの種目もアメリカのチェイス・カリシュが自己ベストを更新して優勝した。

 危機感を覚えるのは、何も今大会の結果だけを見てではない。萩野、瀬戸と同い年のカリシュには、まだまだ伸びていきそうな予感があるからだ。

 平井監督は「カリシュは大学を卒業した今シーズン、急激に力をつけてきた」と話していた。カリシュはあのマイケル・フェルプスを育てた、ボブ・ボウマンコーチが6歳から目をかけてきた選手だ。大学はジョージア大学に進み、大学のチームでトレーニングを積んできた。

 アメリカの大学はNCAAのルールが厳しく、単位取得が規定数に達していないと競技に出場できない。また、練習時間にも制限がある。それは本業である学業に充てる時間を確保するためと、各大学のトレーニングの過熱を防ぐ意味があるだろう。トレーニングはある一定レベルまでは、量をやれば効果が出る。大学の商業的アピールを考えたら、選手をどんどん鍛えて強くすれば、大学としてはいいアピールになるだろう。しかし、それが過熱すれば選手は学業を疎かにして競技に特化していくこととなり、特化すればするほど、選手として強くはなっても、人間としては偏ってきてしまうこともあるだろう。

 練習時間の制限は練習の効率を上げる効果もあるだろう。大学同士、同じ限られた時間の中で選手を強化するため、コーチはその条件内でもっとも効率よく強くするためにはどうしたらいいか工夫する。選手もそのなかで集中してトレーニングするはずだ。

 また、NCAAシーズンではカンファレンス毎に対抗戦が毎週のように行なわれる。たくさんのレースをこなすことはそれだけ身体に負荷をかけることになり、競技会を通した強化につながる。

 商業的にやるのが得意なアメリカだからこそ、ルールの整備も進んでいて、アスリートのトータルの人生も考えた制度が確立されていると言える。

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