【水泳】未完成の渡部香生子、それでもメダル5つの衝撃

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by (C)Takao Fujita / PHOTO KISHIMOTO

9月特集 アジア大会2014の発見!(18)

 男子水泳陣の金メダル8個に対して女子は4個と健闘はしたが、物足りなさも感じた。

 五輪種目に限れば200m背泳ぎで優勝の赤瀬紗也香は2分10秒31と今季ベストを1秒55も下回る平凡な記録で、メドレーリレーも8月のパンパシフィック選手権3位の記録を0秒56も下回った。リオデジャネイロ五輪へ向けてなかなか明るい兆しが見えない中、唯一気を吐いていたのが平泳ぎの渡部香生子だった。

平泳ぎ200mの表彰台で最高の笑顔を見せた渡部香生子平泳ぎ200mの表彰台で最高の笑顔を見せた渡部香生子 8月のパンパシフィック選手権の100mでは、元世界記録保持者のジェシー・ハーディー(アメリカ)にわずか0秒04差の2位なり、その後に行なわれた200mで自己ベストに0秒32と迫る2分21秒47で初優勝を果たした渡部。

 アジア大会でも最初の100mは、少し慌てた泳ぎになってしまい、シ・ジンリン(中国)に終盤で逆転されて1分6秒80で2位と悔しい思いをしたものの、翌日の200mでは、積極的な泳ぎで前半の100mをベストラップの1分08秒55で通過。ラスト50mからは、2位の金藤理絵に激しく追い上げられたが、0秒10抑える2分21秒82で初優勝を飾った。

「男子は金メダルを獲っていたけど、女子は中国勢に金メダルを取られていたので、是非優勝したいと思っていた。それを達成できて日本チームを流れに乗せることに貢献できたのは嬉しいけど、ベストタイムが出なかったのは残念でした」

 こう話す渡部だが、前日の100mから泳ぎを修正して、いい流れにできたのは収穫だったと話す。

「世界と戦えるのは200mだと思うので、レースではいつも通りの先行逃げきりと考えていました。でも前半に行き過ぎて100m通過がこれまで出したことのない1分8秒台で入って、最後は追いかけられてしまったので、そこは修正しなくてはいけない。去年はいい結果を残せなかったが、今年はこれで国際大会2勝となり自信もついて、世界で戦えるという気持ちに変わってきました」

 渡部はその3日後に50m(4位)とメドレーリレー(金メダル)を泳ぎ、競泳最終日の26日には200m個人メドレーに出場した。

 決勝は前半のバタフライと背泳ぎで先頭の葉詩文(中国)に3秒以上遅れる6位で通過したが、得意な平泳ぎで全選手最高の36秒75で追い上げると、最後の自由形でもベストラップの30秒32で泳ぎ、前にいた寺村美穂をかわして2分10秒58の日本新記録で2位に食い込んだ。

「自由形には自信があったので最後まで諦めずに泳げたことが日本記録を出せた要因だと思うが、前半からもっといけないと世界ではまったく戦えないのでこれからは前半の強化を重点的にやりたい」と振り返った渡部。

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