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4冠達成。萩野の成長が「日本競泳界」に与えるインパクト (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT,Nakamura Hiroyuki

「今年の目標は個人メドレーで絶対的な力をつける事ですが、多種目にも挑戦していきたい。自由形では400mで3分43秒90(日本新)を出しましたけど、オーストラリアには同じくらいのタイムで泳いでいる選手がいますし、中国には去年の世界選手権を3分41秒59で優勝した孫楊もいる。8月のパンパシフィック選手権や9月のアジア大会は自分が納得できる泳ぎをするのが目標です。変な泳ぎをして負ければ悔しさが残るので、それがないようにしたいですね」

 萩野の目標は、あくまでも個人メドレーで世界のトップになることだが、マイケル・フェルプスやライアン・ロクテは、メドレー以外の種目でも金メダルを獲得している。指導する平井伯昌(のりまさ)コーチは「背泳ぎでいえばスタートやターンなど、その種目のトップを狙うとなれば細かい技術をもう少し突き詰めていかなければいけない」と課題を指摘する。萩野はそれを理解したうえで、個人メドレーで世界最強になるために、背泳ぎや自由形でトップになることも必要な条件と考えているのだ。

 そして、萩野のそんな取り組みが、他の選手にも刺激を与え、競泳ニッポンのレベルをアップさせているのも事実だ。今回の日本選手権で、その象徴ともいえたのが背泳ぎの入江陵介の進化だろう。

 ロンドン五輪100m背泳ぎで銅、200mで銀メダルを獲得した入江は、昨年4月の日本選手権では100m背泳ぎで萩野に敗れ、200mは辛勝。世界選手権では2種目とも4位でメダルを逃し、一時は引退を口にするほど落ち込んでいた。さらに、昨年9月にはヘルニアを発症し、今年1月までターンやバサロキックの練習を制限する状態が続いていた。

 それでも入江は、「自分はまだ水泳を続けるしかない」と思い、リオデジャネイロ五輪を目標に定めた。さらに、今回の日本選手権では、これまでのような消極的なレース運びは影を潜め、100mでは前半からテンポの速い泳ぎで萩野をリード。後半も他を寄せつけず、2位の萩野に0秒51差をつけて優勝した。記録は52秒57。これは、昨年の世界選手権の優勝タイムを0秒36上回るものだ。さらに2位の萩野の記録、53秒08は昨年の世界選手権の2位に相当する高いレベルでの戦いだった。

 そして、最終日の背泳ぎ200mで、入江は150mまで自身の日本記録とほぼ同じラップタイムで通過し、昨年の世界選手権2位に相当する1分53秒91で優勝。国内に萩野という強力なライバルが登場したことで、入江の気持ちにやっと火がついたといえる。

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