2012.04.09

【水泳】メダルの可能性十分。15歳・渡部香生子、進化の秘密

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT,Kitamura Daiju/AFLO SPORT

200m平泳ぎで2位になり、五輪代表を決定させた渡部香生子 水泳界の新星、15歳の渡部香生子(かなこ)が、競泳・日本選手権(東京辰巳国際水泳場)でロンドン五輪のキップをつかんだ。

 すさまじいデッドヒートだった。女子200m平泳ぎ決勝。150mは4選手がほぼ同時にターンした。大歓声の中、4コースの鈴木聡美が伸びる。3番手で折り返した5コースの渡部が追う。

 164cm、55kgの小柄な体を逆に武器とし、抵抗の少ない泳ぎでピッチを上げていく。いわばイカやタコのようにふわっと足を動かし、ムチのようにしならせる「イカタコキック」。ラスト50mを36秒39でカバーし、ゴール直前で川辺芙美子をかわした。まさにタッチの差。3位との差はわずか0秒27だった。

 1位が2分22秒99の鈴木聡美、2位は2分23秒56で自己ベストの渡部。ともに昨年の世界選手権で銅メダルに輝いたマッケイブ・マーサ(カナダ)の記録を上回った。

 お立ち台に立つと、渡部は顔をくしゃくしゃにした。涙があふれる。止まらない。

「2位の(電光掲示板の)表示が信じられなかった。ほんとうにオリンピックにいけるとは思っていなかったので…。最後、死ぬ気でがんばりました」

 崖っぷちに立たされてのレースだった。3日前の100m平泳ぎ決勝では6位に沈んだ。高まる周囲の期待に押しつぶされそうになっていた。招集所でテレビカメラを向けられると、ぷいと露骨に嫌悪感を示した。

 でも15歳の心は強かった。その悔しさをバネとし、自身の泳ぎに徹した。「最後は誰にも負けない」という自信の裏付けは、冬場の徹底した泳ぎ込みだった。逃げ場のない1カ月のグアム合宿。時には泣きながら、自身の限界に挑戦した。

「100mで悔しかったことは忘れて、200mに集中することができました」

 修正したのは、ひじの角度だった。スタートとターンに注意し、手足のバランスを意識した。見事、プレッシャーをはねのけた。最後の追い上げと若さを見れば、1992年バルセロナ五輪での優勝の岩崎恭子(当時14歳)を思い出す。