「平地のほうが実績はあるんですけどね」"山の名探偵"早稲田大・工藤慎作が挑む初マラソンと最後の箱根駅伝 (2ページ目)
【転んでもただでは起き上がらない】
1時間09分46秒という区間タイムは、花田監督の想定よりも30〜40秒遅かった。仮に設定タイムどおりに走っていれば、計算上は青学大に勝利していたことになる。だが、こればかりはタラレバを言っても仕方がない。万全な状態ではなくても、パフォーマンス歴代7位に相当する1時間09分46秒で走りきったのだから、工藤の山上りのパフォーマンスにはさすがとしか言いようがない。会心の走りはできなかったかもしれないが、精一杯の走りは見せた。
「走っていて、感覚的にもっとかかっているのかなと思っていました。69分台には収まっていたし、前回より15秒遅れただけだったので、調子が悪いなりにまとめることができたかなと思います」
走り終えた直後こそ悔しさを露わにしたが、箱根から少し時間が経って、工藤はこんなふうに冷静に振り返ることができた。
逆転を喫した黒田朝日の存在も、自身が成長するためのプラス材料と捉えている。
「自分が一番上だとそこで視座が止まってしまい、それ以上の視点にはならないので、ものすごくよい存在だと思っています」
この男、転んでもただでは起き上がるつもりはない。
この後は、3月1日に東京で初マラソンに挑む予定だ。これが目標にしている2028年ロサンゼルス五輪への第一歩となる。箱根の疲労をうまくコントロールしつつ、箱根後もトレーニングを積み重ねている。
「実際にコースを見ていないので何とも言えないですけど、前半が下りで後半が平坦というのは(快走した)丸亀ハーフや全日本8区もそうなので、そういう意味では結構相性がよいのかなと思っています」
「自分のリズムを刻み、淡々と走れるのが自分の強み」と言い、マラソンを走るイメージは固まりつつある。とはいえ、初マラソンは東京の街中を気楽に走るつもりだ。
そして、いよいよ大学ラストイヤーを迎える。
「トラックには未練はそんなにないので、マラソンを走ったあとはゆっくりしたいです。それこそ、出雲駅伝あたりからシーズンが始まるぐらいに考えています。短距離のようなシーズンの組み立て方ですね(笑)」
ロードレースこそ自身の持ち場と考えて、そこにじっくりと合わせていくつもりだ。
最後の箱根駅伝ではもちろん、2011年から遠ざかっている総合優勝を目指すことになる。
「総合優勝を目標に掲げていきたいですし、立ちはだかるチームを倒していきたいです。ただ、現状では優勝はとても難しいと思っています。一段二段上がるために、何かを変えていかないと、早稲田はまだ勝てないのかなと思っています」
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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