【箱根駅伝2026】青山学院大は"13〜14番目の選手もしっかり走る!" 急遽起用の11番手・平松享祐が4区で好走できた背景にある強さの礎とは? (2ページ目)
【急遽起用の4区・平松享祐が快走できた背景】
平松が"当落線上"に浮かび上がってきたのは、11月9日に行なわれた世田谷246ハーフマラソンだった。青学大の上位選手の結果を振り返ってみよう(単位は「時間:分:秒」)。
3位 佐藤愛斗 1:01:57
4位 平松享祐 1:02:04
5位 中村海斗 1:02:08
今回の箱根駅伝で言えば、世田谷ハーフからの"当選"は佐藤と平松のふたりだったことになる。それにしても平松と中村の間に横たわる「4秒」の意味は大きい。箱根を走れるのか、走れないのかは、人生を左右する。
青学大で気が抜けないのは、この世田谷ハーフのあとの11月下旬にMARCH対抗戦の10000mがあり、メンバー選考ではかなり大きな意味を持つことだ。世田谷ハーフの上位3人は最終4組目を走り、以下の結果にとなった。(単位は「分:秒:」)
佐藤 27:55:93 8位
平松 28:25:01 19位
中村 28:49:40 26位
佐藤が27分台を出して、ここでメンバー当確サイン。平松が11番目の選手となったのは、MARCH対抗戦で自己ベストは出したものの、集団の競り合いから脱落した内容がマイナスに働いたからだろう。
箱根駅伝の選手選考について、原晋監督はふたつの重要な要素があると話す。
「陸上競技というものは、数値で表わすことができて、統計学からのアプローチが可能です。まず大切なのは、選手の絶対値、自己ベストですね。最大に出力した時に、どれくらいのタイムが出せるのか。これは大切な要素です。そしてもうひとつは再現性。ポーンと自己ベストが出る選手というのは、いるんです。でも、大切なのはそれをきちんと再現できるかどうか。たまたまコンディションが合ったのではなく、計画どおりに出せることが重要なんです」
青山学院の強さは、この「再現性」において厳しいテストを何度も課されることだ。
特に11月は「全日本大学駅伝→MARCHルート」と「世田谷ハーフ→MARCHルート」、この2本を当てなければ再現性があるとは認められない。
平松についてはMARCH対抗戦が微妙な結果だったこと、その後の最終強化合宿で逆転に至らなかったことで、11番目の扱いになっていたのだろう。しかし、激しい内部競争のなかで、平松は他大学であれば往路のエース区間に配置されるような力を身につけていたことになる。
前出の監督が言う。
「たぶん、青学さんは11番目の平松くんだけじゃなく、13番目、14番目の選手たちも同じような走りができたんじゃないでしょうか」
なんという選手層だ。
恐ろしいのは、原監督は再現性について1年間をかけてずっと観察していることだ。
今回の箱根駅伝で9区の区間賞を獲得した佐藤有一(4年)が言う。
「2月の宮古島駅伝の2区で結構いい走りができたんです(区間3位)。それを見て監督が『佐藤、すごいよ』と言ってくれて。宮古島からトラックレース、夏合宿の練習消化率、全日本、MARCH対抗戦とトータルで監督は自分の走りを見てくれていたと思います」
原監督は再現性の高い選手を、毎年、毎年箱根駅伝に送り出してくる。
今年もすでにニューイヤーハーフから競争は始まっているということだ。
この大会で上位に入った椙山、そして黒田朝日の弟である黒田然が、来年、箱根駅伝でたすきをつないでいる可能性は大いにある。
青山学院の強さ。それは1年をかけたサバイバルにある。
つづく
著者プロフィール
生島 淳 (いくしま・じゅん)
スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo
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