選手兼監督としてニューイヤー駅伝出場を目指す神野大地が直面した厳しい現実「今のままじゃ勝てない」 (2ページ目)
【レースに臨む準備のところでの意識の問題】
マラソン選手としてオリンピック出場を目指していた頃の神野を取材した時に感じたのは、レース前に限らず、日々の生活でもつねにストイックだということ。特に、食べ物については慎重で、海外遠征に行った際、ビュッフェで並べられているものを動画で撮って栄養士に送り、何を食べたらいいのか、指示を仰ぐほどだった。
実は、ビュッフェは選手の食事への意識を見るうえで非常に有効だと言われている。何をどのくらい食べるのか。指導者はそれを見て、選手のコンディションやアスリートの意識を測る。例えば、レース直前の揚げ物や生ものは論外だろう。「勝負の神は細部に宿る」という言葉もあるように、神野はそこにこだわってきた。それだけに生活面の細部まで意識せず、淡々とレースに臨んだ選手たちの姿勢に危機感を抱いたのだろう。
「みんな、練習ができていないわけではないんです。むしろ、ホクレンに向けては意欲的に取り組んでくれていたけど、結果に結びついていない。もちろん100%の練習や準備をして、調子がいいと感じていても、結果がともなわないこともあります。それにしても、今回の結果は厳しかった。その原因のひとつは、レースに臨む準備のところでの意識の問題かなと思います。
今回は鬼塚が結果を残しましたが、『(自分と違って)鬼塚さんは合宿に行かせてもらっていたから結果を出せた』とだけ思うのか、最後の調整段階でも食事や睡眠などやるべき準備をできていたかというところにも目を向けるのか。そこをどうとらえるかで、これからの結果や伸びしろに違いが出てくると思います」
新チームながらMABPの環境は悪くない。寮はないが、新設したクラブハウスがある。サウナに水風呂、ジムを備え、栄養士が考えた食事も朝夕2回出る。「よいパフォーマンスを発揮するために」というポリシーのもと、充実したサポートが提供されている。この環境のなかで競技力をどうアップしていくのか。ここにいることに満足してしまうと結果は出ないだろう。
今回の結果を受け、神野は方針を転換する予定だという。
「ホクレンの結果を受けて選手が悔しさや危機感を覚えているのはわかりますが、そうかといって、何も言わずにいると何も変わらない。今後は、締めるところは締めていこうと思っています。今のままじゃ東日本で勝てないですから」
厳しい言い方をすれば、今回の結果は選手たち自身の責任とも言える。結果を出していれば何も言われない。だが、陸上はタイムを競う競技であり、レースでは勝ちきることがすべてだ。それができないのであれば、立ち止まって、従来のやり方を見直していくことが必要だろう。
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