大阪で黒田朝日が好走!「2025青学マラソン3連チャン」のラスト、東京マラソンに出場する真打・太田蒼生はどんな走りを見せるか (2ページ目)
【黒田の走りに太田は東京で応えるのか?】
もともと、青学大の学生のなかで、黒田のマラソン志向はそこまで強くない。原監督が促さなかったら、そもそも走ってもいないだろう。練習も30kmまでが最長で、フルマラソンはぶっつけ本番のようなものだが、黒田と若林が2時間6分台を出し、別府大分毎日マラソンで若林とともに走った白石光星(4年)が2時間08分42秒で6位に入ったことから、防府、福岡国際、別府大分、そして大阪と今年の東京世界陸上の選考に絡むレースで、トップ10に複数の選手を送り込んだチームは、実業団ではスズキ、トヨタ自動車、NTT西日本などがあるが、優勝争いに絡んだインパクトでは青山学院大がナンバーワンと言っていいだろう。
「箱根駅伝優勝の青学の選手たちが、マラソンでも通用!」という見立ても出ているが、むしろ、逆ではないか?
2時間6分台で走れるエース級の選手が複数いて、チーム内で中位の選手であってもフルマラソンを2時間8分台で走れる「チーム総合力」を持った学校が、箱根駅伝を勝っている−−という見立てが出来るのではないか。
レース後、黒田が「世界にこだわってやりたいわけではなく、今回走った経験は4年生になってからの駅伝への自信になります」と話していたとおり、大阪で優勝したアダン、3位のトラ、5位のゲテラ・モラといったエチオピア勢とフルマラソンで互角に渡り合ったのだから、箱根駅伝で留学生と競ったとしても、なんら恐れることはないだろう。そして黒田の自信は、周りの選手たちにも伝播していくはずだ。
さて、3月2日の東京マラソンには箱根駅伝を4年連続で走った太田蒼生が登場する。4年間トータルで考えたとき、青学史上最高の駅伝ランナーと言っていいかもしれない。
4年間走った選手で思い出すのは小野田勇次(6区のスペシャリスト)、飯田貴之(8区、5区、9区、4区を走ったユーティリティ・プレーヤー)といった先輩たちだが、太田は3区、4区という往路の重要区間で、他校のエースと堂々と渡り合い、決定打、追い上げ弾を放つなど、レースに与えたインパクトとしては青学史上最大級のものがある。
当初からマラソン志向が強く、「影響を与えられる選手になりたいです」と太田は話していたが、ともに練習を積んできた若林、黒田が2時間6分台で走ったことから、太田も同等のタイムを出せる実力は十分にあるはずだ。
実際、黒田も「若林さんのタイムは、自分のなかで目安としていたタイムなので、超えられてよかったです」と話しており、太田とすれば「2時間6分切り」がターゲットとなるだろう。
ただ、気になるのはレース当日の気温だ。3月2日の東京は20度を超えるという予報も出ており、寒さが続いてきたなかで、いきなりの気温上昇はダメージになりかねない。また、原晋監督が今季の出雲、全日本のあとに、「太田は気温が低くなってから本領を発揮するのよ」と話していたことも気になる要素ではある。
私は勝手に、別大から大阪、東京へと至る2025年の3つのマラソンへ挑戦する青学大のアプローチのことを、「2025青学マラソン3連チャン」と勝手に呼んでいるが、トリとして登場する太田が真打にふさわしい走りを見せられるか。
ワクワクしながら見守りたい。
著者プロフィール
生島 淳 (いくしま・じゅん)
スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo
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