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箱根駅伝2025 青学大が「挑戦者」として臨む2年連続8度目の総合優勝「呑気に構えている場合じゃない」 (2ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【2連覇のカギを握るのは中間層?】

 そしてもうひとつ、原監督が言及したのは「特殊区間」における選手の経験値。

 青山学院には1年、3年と山上りを経験している5区に若林、そして6区には前回、58分14秒で区間2位の好走を見せた野村昭夢(4年)が残っている。今回、野村は区間新を狙っている。

「前回は12月上旬のインフルエンザの影響で、体調が万全というわけではなかったんです。今回は、舘澤亨次さん(現・DeNAアスレティックスエリート)が持っている57分17秒の区間新の更新はマストとして、誰も突入したことのない56分台に挑戦します。ポイントは下りが始まる前の上り坂です」

 前回、國學院と駒澤の6区は59分台だった。両校の「野村対策」もポイントになるのではないか。
 
 こう見てくると、青山学院にとって今回の箱根駅伝のポイントは次の3つになる。

 エースの出来。

 中間層。

 そして、特殊区間。

 特殊区間は青山学院にアドバンテージがありそうだが、「絶対に区間賞を取ります。区間2位に1分以上の差をつけます」と豪語する鶴川、淡々とエースの職務をこなす黒田(彼がレースで外したことを一度も見たことがない)、そして箱根で「決定打」を放ってきた太田。この3人と他校のエース陣との対決は、今回のレースの「華」となるだろう。

 青山学院にとって、大きな不安要素となるのが「中間層」なのだ。田中悠登キャプテン(4年)は全日本のあと、こう話していた。

「今年の課題は、中間層の意識がもうひとつ上がってこないことです。なかには、来年頑張ればいいや、と思っている下級生がいるかもしれない。だとすると、厳しい。勝つためには、どうしても突き上げが重要なんです」

 なぜ、突き上げが大切なのか。田中は自分の経験談として語る。

「前回、僕は8区に区間エントリーされていました。でも、下半身の痛みが耐えられないほどになって、年末になって泣く泣くあきらめざるを得ませんでした。でも、僕が出なくても圧勝だったわけです。

 これまで4年間を見てきて、12月に入るとなにかしらアクシデントが起きます。去年だって、12月頭にインフルエンザが流行して、中旬には佐藤一世さん(現・SGホールディングス)が虫垂炎になったり。予測できないことは必ず起こる。その時にどれだけほかのメンバーがカバーできるか。それが箱根駅伝に勝つポイントなんじゃないかと思います」

 全日本に敗れ、原監督は優しさを見せた。

 ただし、箱根駅伝に向けては競争を促し、厳しさを見せたはずだ。

「國學院、駒澤、強い。でも、相手が強ければ強いほど、挑戦しがいがあるし、勝ったときの喜びは大きいよね」

 ディフェンディング・チャンピオンは、挑戦者として「箱根駅伝2025」に挑む。

著者プロフィール

  • 生島 淳

    生島 淳 (いくしま・じゅん)

    スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo

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