高校記録大幅更新の吉岡大翔(佐久長聖)。留学生のライバルに「まったく通用しなかった」悔しさを糧に順天堂大で「世界と戦う」 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi
  • photo by Wada Satoshi

【ライバルの留学生に敗れた悔しさ】

 5000mで高校記録を樹立したレースもそうだったが、吉岡は外国人選手が相手でも、まったくひるむことなく、対等にレースを進めている。

 2022年12月の全国高校駅伝(以下、都大路)でも、そんなレースを見せた。

 都大路では、前回走った最長区間の1区ではなく、留学生も起用される3区に吉岡は登場した。

「吉岡には留学生と勝負をさせたかったですし、本人もそういう思いが強かった。12月に入ってから、前年のリベンジで1区を走りたいという思いも湧いてきたようですが、永原(颯磨、2年)の調子も上がってきたので、1区を永原、3区を吉岡にしました。本人たちの希望もありますが、彼らの将来の競技のことを考えて、そういう配置にしました」

 もちろんチーム戦略もあってのことだが、佐久長聖高の高見澤勝監督がこう話すように、ここでも吉岡は世界と戦うことを見据えて留学生に真っ向勝負を挑んだ。

 3区を任された吉岡は、2位でタスキを受けると、すぐさま先頭に立つ。しかし3.5km過ぎに倉敷高の留学生、サムエル・キバティに抜かれてしまった。

 実は、U20世界選手権で吉岡のひとつ前の順位6位だったのがキバティだった。しかも、キバティは終盤に転倒したのにもかかわらず、吉岡は先着を許している。「順位以上に差がある」と、吉岡は痛感していた。

 吉岡も終盤に粘りを見せ、佐藤が前年につくった日本人最高記録(23分10秒)を大きく上回る22分51秒をマーク。しかし、区間タイムでは、新記録を樹立したキバティに21秒もの大差をつけられてしまった。

 走り終えた吉岡の口をついて出たのは、満足感ではなく、U20世界選手権に続いてキバティに敗れたことへの悔しさばかりだった。他の留学生には勝利したのにもかかわらず、だ。

「キバディくんにまったく通用しなかった。そういう悔しさを、特にレース後に感じました。今回、どれだけ(U20世界選手権の)リベンジできるかをテーマにしていたんですけど、結果的にその時よりも差をつけられてしまった......」

 この悔しさは、世界の舞台に立つことではなく、世界と戦うことを目標に掲げているからこそ実感したものなのだろう。

「高見澤先生からも『今回の3区は、留学生とどれだけ戦えるかだ』と話をいただいていました。たしかに高校としては集大成かもしれないですけど、陸上人生においては、ステップアップするためのひとつの駅伝大会に過ぎない。留学生との差を感じられたので、今後はその差をどれだけ詰めていけるかがテーマになる。頑張っていきたいと思います」

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