復活の一歩目を踏み出した不破聖衣来。監督にLINEで送った決意は「12月に日本記録更新」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 このレースを復活の第一歩にする不破だが、このあとは無理をさせることなく、次のレースは10月30日の全日本大学女子駅伝になるだろうと五十嵐監督は話す。そして次の目標は、昨年30分45秒21を出した12月の記録会で、新谷仁美(積水化学)が持つ30分20秒44の日本記録更新だ。

 そして、「12月の記録更新」という目標は不破自らが決めたことだった。

 貧血で思うように練習が積めていなかった8月に不破は五十嵐監督にLINEで、「自分なりにいろいろ考え、最近気分が落ち込んで走る理由がわからなくなったのは、目標が今の自分から遠い存在のものしかないからだと思いました。だから直近の目標を持とうと考えました。その目標は12月の1万mの記録会で日本記録を出すこと。そのためには今のままではいけないし、簡単に達成出来る目標ではないが、目指したい目標にしました」とメッセージを送っていた。

 7月には世界陸上の女子1万mを観るため、五十嵐監督とともにオレゴンまで出かけた。そこで一番印象に残ったのが、6800m以降の、1周71秒台のペースに上げた競り合いと、ラスト1周は60秒台でレースが決まった世界のスパートの切れ味だった。これもまた不破にとって刺激となった。

 五十嵐監督は「そのレースを観た不破はそんなレースに圧倒されたり臆したりすることなく、終わったらすぐに『この人たちに勝つためにはどうすればいいですか』と聞いてきた。それがすごいなと思ったし、連れて行ってよかったなと思いました」と話す。

 ラスト2800mは、「きつかった」と言いながらもノビノビとした、彼女らしい走りを見せた不破は、この大会で記録とは違う成果を得て復活への一歩を踏み出した。

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