復活の一歩目を踏み出した不破聖衣来。監督にLINEで送った決意は「12月に日本記録更新」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 今秋の日本インカレで注目されていた女子1万mの不破聖衣来(拓殖大2年)。32分55秒31のタイムで2位に14秒34差をつけて優勝した不破は、ゴール後にあふれ出した涙を拭った。

 今年4月17日の日本学生個人選手権5000m以来のレース。その時は「予定どおりだった」と最初からのスローペースで走り、自己記録より2分以上遅い17分30秒45のゴールだった。だが今回はラスト2800mから抜け出し、後続に大差を付ける圧勝劇を見せた。

ケガ、貧血を乗り越えて新たな一歩目を踏み出した不破聖衣来ケガ、貧血を乗り越えて新たな一歩目を踏み出した不破聖衣来 拓大に入学した昨年は各種駅伝で圧巻の走りを見せ、12月11日の関西実業団ディスタンストライアルでは初の1万m挑戦ながら日本歴代2位の30分45秒21を出し、今年の世界選手権代表の最有力候補になって注目された。

 しかし、今年1月16日に行なわれた全国都道府県女子駅伝の4区で区間新を出したあと、アキレス腱周辺炎で走れなくなってしまった。4月の日本学生個人には回復途中で挑戦し、5月の日本選手権1万mは「右梨状筋故障による調整不足」のために欠場。世界選手権出場を逃すことになった。

 そして今回も5000mと1万mにエントリーしていたが、8月から起きていた貧血が不安材料となり、出場するかどうか大会の3日前まで迷っていたという。

 拓殖大女子陸上部の五十嵐利治監督は、「この試合のエントリーは8月なので両種目出ようとしてのエントリーではなく、どちらかいいほうに出ようと話していた。1万mを選んだのは、『5000mだと1周74秒などの速いペースで走らなければいけなくなるが、1万mだと80秒でいける』ということで選びました」と説明する。

 レースは1周78秒ペースで始まり、4周目が81秒に落ちたところで不破が先頭に出て、80秒前後のペースで引っ張る展開。1000mは3分20秒ペースで、ゴールタイムは33分前後が予想される展開になった。

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