箱根駅伝で國學院大旋風の予感。学生ハーフ優勝の平林清澄は「将来、マラソンの日本代表になれる素材」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

マラソン挑戦も視野に

 平林のルーキーシーズン、プロ野球のように新人賞があるなら彼が受賞していただろう。今回の優勝に加え、ホクレン網走大会の1万mで28分38秒の自己ベストをマークし、出雲、全日本、箱根駅伝と3本の駅伝を走った。

「自分でも、よくやれた1年だと思います。でも、今日のレースでラスト1キロをしっかり上げることができなかった。逃げ切れていますけど、そこのラスト1キロを上げきれるようにならないといけないと思っています。あと、僕はトラックではいい記録をもっていないので、ここからもう1回作り直して、スピードを磨きながらタイムも狙って行きたいと思います」

 負けん気の強さに加え、高い向上心を持ち、淡々と自分のリズムを刻んでロードを走れるところは、マラソン向きだ。平林自身も昨年、「将来的にはハーフとマラソンをやっていきたい」と語っていた。どうやらその時期はかなり早まりそうだ。

 レース後、前田監督は来季の平林について、こう語った。

「平林とは、MGC(出場権)をとりたいねという話をしているので来年、マラソンにチャレンジさせます」

 マラソンで42キロを走るには足作りはもちろん、体力的に強化しないと故障する可能性があるため、これまでは練習を積み重ねて体が完成した上級生が走ることが多かった。だが、「この子はちょっと違う」とスケールの大きさと高い走力を感じた前田監督が昨年、平林にマラソンへの挑戦を打診した。

「平林は十分、勝負できると思うし、将来、マラソンの日本代表になれる素材。足りないのは経験だけだと思うんです。レースについては、大阪か東京を考えていますが、東京は設定ペースが1キロ2分57秒と早く、面子的にも狙ってくる選手が多いと思うので、大阪のほうがいいかなと思っています。今年はMGCを狙うことを考えて、平林については夏も計画を変えていきたいなと考えています」

 平林もやる気満々だ。

「僕もやるからにはMGCを狙いたい。昨年から監督から『お前はロードでいける』と言ってもらっていますし、自分もその気でいました。42キロは未知ですが、これからの練習で自分のなかにある恐怖心をなくしていけたらなって思います」

 その前に6月、中国で開催予定のユニバーシアードシティで世界の学生たちと戦うことになる。ここ2年はコロナ禍の影響で中止になっているが、3年前の19年イタリア・ナポリで開催された時は、ハーフマラソンで相澤晃、中村大聖、伊藤達彦の3名が1位から3位までを独占した。平林もそこを意識していると言う。

「前回、イタリアでは日本人が1位から3位を独占しているじゃないですか。世界のレベルは高いと思うけど、自分も相澤さんたちと同じように世界と戦って、そのなかでしっかりと結果を残していきたい。最終的には昨年、大迫(傑)さんが戦ったように自分もいずれ五輪で世界と戦っていきたいと思います」

 平林、そしてキャプテンの中西のふたりが学生の世界ながらも結果を出せば、その後の夏から秋に向けてチームに好影響を与えるだろう。國學院大は木付琳、島崎慎愛、藤木宏太ら主力が卒業し、4月からは新たなチーム作りが始まるが、突出した選手がいるとチームにはそこに追いつこうという意識が高まる。駒澤大の田澤効果がまさにそうだが、キャプテンの中西、平林、そして2月の全日本実業団ハーフで60分43秒という好記録を出した山本歩夢(1年)が軸となり、チームを引っ張っていくことになる。

「出雲優勝を経験しているのは、このチームでは自分しかいないので、その時、優勝した思いをチーム全体で、箱根で味わいたいと思います」

 キャプテンの中西は、そう語る。

 國學院大には、4月から5000m13分台の上原瑞翔ら力のあるルーキーが入ってくる予定だ。この日の学生ハーフでは坂本健悟(3年)が62分58秒で18位とまずまずの結果を出し、新4年生も力が整いつつある。駅伝シーズンに向けて前田監督のチーム作り、そして平林のマラソン挑戦と今年の國學院大は華となる話題で陸上界を盛り上げてくれそうだ。

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