箱根駅伝に向けトラックシーズンから見た戦力分析。優勝候補となりそうな3大学の状況は? (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 長田洋平/アフロスポーツ

 安定感と選手層でいえば、青学大も強い。

 全カレ5000mで優勝した近藤幸太郎(3年)は、エースとしてトラックシーズンから非常に安定した強さを見せている。4月の日本学連記録会の10000mでは、青学大記録となる28分10秒50をマークし、7月のホクレン士別大会5000mでも13分34秒88の青学大記録をマークした。その後の夏合宿も順調に練習を消化し、箱根に向けて、どこまで成長していくのか楽しみしかない。

「夏合宿は練習の質が上がって、ケガ人もいなくて、すごく順調でした」

 そう近藤が語るように、今年の青学大の充実はケガ人がほとんど出なかったことにある。

 その立役者のひとりが伊藤雅一コーチだろう。

 伊藤は青学大で主務を務めていたが、卒業後、中野ジェームズ修一の下でトレーナーのイロハを学んだ。これまでも青学大の箱根駅伝前のコンディショニング調整やメンタル強化で大きな役割を果たしてきたが、今年からコーチになり、日頃からケアやコンディショニングについて指導をすることでケガの発症を抑えた。青学大にとって、これほど大きな戦力はなかったのではないか。

 選手層でいえば、駒澤大の田澤、順大の三浦龍司のような飛び抜けた存在の選手はいないが、近藤がエースに成長、さらに5000m13分台が22名もおり、また自己ベストを更新している選手も22名もいることからも全体の質が上がっていることが見てとれる。

 4年生で主将の飯田貴之は7月の記録会5000mで13分55秒83の自己ベストを更新、同記録会では今年箱根6区3位と快走した高橋勇輝も13分54秒72で自己新を叩き出している。

 3年生では1年時、エースとして活躍した岸本大紀が復調過程にあり、5000mでは自己ベストを更新した。出雲駅伝のエントリーからは漏れたが全日本、箱根では元気な姿を見せてくれるだろう。同じく3年の西久保遼は関東インカレのハーフで優勝し、4月には10000mで28分21秒39の自己ベストを更新し、駅伝未経験だが今シーズンの駅伝の主力組に入った。今年箱根10区4位と好走した中倉啓敦も今年になって5000mを13分55秒29の自己新を出して、出雲のエントリーを勝ちとった。

 1年生から4年生まで全学年、万遍なく走れ、平均値が高いのが青学大の特徴だが、逆にいうと原監督の言う「ゲームチェンジャー」「エース」と呼ばれる強い選手が近藤以外に見当たらない。前回は神林勇太、吉田圭太という柱がおり、3冠を達成した時は一色恭志、田村和希、下田裕太、森田歩希ら他大学であればエース級の選手が揃い、圧倒的な強さを見せた。近藤に続いて勝てる強い選手が果たして出てくるかどうか。

 近藤は、「最初(出雲)が大事」と言う。

「チームとしては駅伝3冠を目指しています。今年は選手層が厚いですし、いつの間にか前にいるのが青学の駅伝なので、みんなでタイトルを勝ちとりにいきたいです。まずは出雲ですね。ライバルは駒大です。早大、順大も強いので、気が抜けない戦国駅伝になると思います」

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