山の神・神野大地が大迫傑の走りを分析。「大きなポイントになった」と指摘したことは? (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

「キプチョゲ選手は、フォームを見ても一切無駄な動きがなくて、レース中はすごく集中しているなと思いました。展開は、ラストでの争いが得意ではないので、早い段階で勝負を仕掛けるというのを決めていたと思うんです。それをやり遂げ、しかも金メダルを期待されたなかで、それを獲るのは普通に力を持っている選手以上に力がないとできないと思うんです。キプチョゲ選手は走りも強さも異次元で圧倒的でした。

 大迫さんは、6位入賞で、レース後に『100%出しきった」と語っていたように自分の能力を出したと思います。引退レースになりましたが、テレビを見ていた人は、この走りを見て、まだまだやれると感じたと思います。でも、それは簡単じゃないんです。僕は、大迫さんがやってきた練習がすごくタフで、苦しくて、それを幾重にも積み重ねてきたのを見てきました。その厳しい練習の先に結果があった。大迫さんは、その練習をさらに何年も続けることが難しいと感じたから引退することにしたんだと思います」

 日本は大迫が6位で、ロンドン五輪での中本健太郎以来、2大会ぶりの入賞を果たした。中村は62位(2時間22分23秒)、服部はフラフラになりながら73位(2時間30分08秒)でフィニッシュし、レース後に重度の熱中症と診断された。106人中30名が棄権するという非常に厳しいレースになったが、前日の女子マラソンを含めた結果から日本の長距離界について神野は何を感じたのだろうか。

「男子マラソンはロンドン五輪以来の入賞ですが、その時と今ではマラソンのレベルが全然違うと思うんです。大迫さんの6位入賞も女子の一山(麻緒)選手の8位入賞もかなりレベルが上がったなかでの結果ですし、すごく大きな成果だと思います。

 僕がマラソンをやり始めたころは日本のマラソン界の動きが止まっていて、世界がどんどん強くなっていた時代でした。でも、MGCに向けて、みんなが前を向いて取り組むことで全体のレベルが上がってきて日本が世界に迫ってきていると思います。でも、またこの先、世界が大きく動いてくると思うので、その時に日本が遅れないようにすることがすごく大事だと思います。

 今回、大迫さんが結果を出したことで、次は自分だと思っている選手が多いと思います。僕もチャレンジしたいですし、そのためにも強さを身につけたいと思いました。ペースメーカーがついてタイムを出すよりもどんな揺さぶりにも動じずに、自分で42キロをイメージして勝つ。そういう強さが五輪には必要です。大迫さんは、『次は若い世代に』ということで日本人の夢を次に託したので、自分たちや次の世代が大迫さんの結果を越えていきたいですね」

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