2021.06.27

京大卒の金メダル候補・山西利和が明かす「仕事のキャリア」と「競歩」の葛藤

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • photo by Kyodo News

――「愛知製鋼」には正社員として入社されたんですよね。

「『愛知製鋼』は、トヨタのグループ会社で、主に自動車用の鉄や鋼(はがね)を製造、販売する会社です。陸上に対して理解のある会社で、僕は早朝に自主練をして出社。その後、職場の仕事をしてから、夕方以降練習するといった形で、競歩を続けさせてもらっています」

―― 競歩の道を選び、会社員との"両立"で出場した、2019年の世界陸上ドーハ大会。優勝の瞬間は、「競歩を続けてよかった」という感慨もひとしおだったのでは?

「優勝もうれしかったですが、世界陸上の日本代表に選ばれた時がいちばん感慨深かったですね。社会人になって以降、競歩を続けさせてもらいながらも、本当に自分が日本代表になれるのか、自信が持てない時期があって。ある種のプレッシャーかもしれませんが、ずっとモヤモヤした気持ちがありました。一方で、国内で勝って、日本代表になれれば、世界で戦えるという自信もあった。だからこそ、世界陸上出場が決まった時は、ホッとしました」

―― 世界チャンピオンになったことで、周囲からの目も変わったのではないですか?

「変わったかはわかりませんが、会社の同僚や先輩、なかには役職が上の方々が、僕のレースをライブ配信で見ていただいているみたいで。『レース、見たよ!』と声をかけてもらうと、やっぱりうれしいですし、会社のサポートには本当に感謝しています」

―― そうした社内の応援が、山西選手のモチベーションになっていると。

「競歩がマイナー競技ということもあるのですが(笑)、正直、僕が競歩をしていても、会社にとって『広告塔』としての役割はそんなに大きくないと思うんです。ただ、僕の活躍で社内の雰囲気がよくなったり、社員の一体感が生まれたりといった効果が少しでもあれば、会社への貢献にもなるのかなと思っています」