2020.12.30

箱根駅伝のスターが実業団の監督となり
見えたもの「そろそろ改革しないと…」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

知られざる実業団陸上の現実~駅伝&個人の闘い
住友電工(1)

 住友電工の長距離は、渡辺康幸氏が監督になってから大きく変わったと言われている。

「世界に羽ばたき、世界のトップで戦える選手を育成する」と語る監督のもと、個性を生かすことを主とした指導で、田村和希、遠藤日向といった日本のトップランナーを輩出している。

2015年4月から住友電工で指揮を執る渡辺康幸監督 渡辺監督が住友電工陸上部の指揮をスタートさせたのは、2015年4月である。それ以前は、2004年から早稲田大競走部の監督として指揮を執り、大迫傑らマラソン界のトップ選手を輩出しつつ、チームを立て直し、2010年には出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の学生3大駅伝を制した。そんな名将が次の戦いの場として選んだのが、住友電工だった。

「住友電工を選んだのは、松本正義会長の『日本の陸上界を考えた時、実業団は駅伝の強化ばかりしている。そうではなく、個人の選手を育てるチームにしてほしい。長距離だけでなく、短距離も含め陸上競技全体を強くしてほしい』という想いに共感したからです。日本人は駅伝やマラソンが好きですから仕方ない部分はあるのですが、世界で戦える選手が出てこないと本当の意味でマラソンに強い日本にはならないですし、陸上界を盛り上げることにはつながらない。私は個人を強くしたいですし、住友電工はその個を育てることに理解があるので、ここに来ることを決めました」

 渡辺監督の就任後、入社する選手の顔ぶれが変わった。箱根駅伝で活躍した田村、坂口裕之ら大学トップクラスの選手はもちろん、高卒で世界を目指す遠藤など、個性豊かなランナーが次々に入ってきた。渡辺監督がスカウティングで重視する点は3つだという。

「まず、走りのフォームです。基本的にフォームがきれいじゃないと強くならないと思っています。腕の振りがきれいな選手は伸びるんですよ。2つ目は、志が高く、強くなりたいという意欲があること。そして3つ目が人間性です。陸上は個人種目ですが、いろんな人がいるチームにいるので、組織のなかできちんと生きていけるかどうかということです」