東京五輪、男子マラソン決勝だった日。服部勇馬は今どんな気持ちでいるのか (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Kyodo News

 もうひとつは新型コロナウイルス感染拡大による影響で陸上競技場が使えず、土のグラウンドやクロスカントリーコースなど不整地での練習が増えたこと。「普段はあまり走らないような場所を走り、新しい発見がありました。そうした点もスピード向上につながったかなと思います」と服部は振り返る。

 ホクレン網走大会を見た佐藤敏信監督は服部のフォームの変化を感じたという。

「走りがコンパクトになった感じがあります。しかし、ピッチ走法なったわけではありません。上下動の動きも相変わらずないですし、上体はリラックスしたまま、コンパクトでかつスムーズにスピードが出せている印象でした。ペース変化にも対応できそうですし、マラソンに生かせる動きだったと思います」

 コロナ禍による練習計画の変更や、出場予定のレースが中止になったが、ここまでの強化は順調だと師弟は口を揃える。

 スピードの向上は、今後の練習やレースの取り組み方にも変化を与えそうだ。

「すでに始めていますが、スピードとジョグの感覚をいかにすり合わせていくか。そのイメージをつくっていきます。そしてスピード練習も高いレベルのものを続けていきたいです。今後も挑戦すべきところは挑戦していきます」

 昨今の情勢から先のプランはなかなか立てられないが、この冬、マラソンに出る意向はすでに固めている。網走での記者会見では「2時間5分30秒を切るレースに挑戦したい」と語っていたが、それもスピードへの恐怖心が払しょくされたからこそ。

「今年の東京マラソンを見ていても、みんな前半から積極的なレースをして好記録を出していました。自分はレースを壊したくないと考えてしまい、そこまで攻められませんでしたが、今は自分でもいけるんじゃないかと自信が出てきています」

 スピードをいかに実戦につなげるか。実際にマラソンを走ってみないことにはわからないと服部は言うが、手ごたえを感じている様子だ。

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