2020.07.30

「トラックの格闘技」で日本人は勝てない。
クレイアーロンは定説を覆せるか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

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 7月23日から3日間、東京陸上選手権が駒沢公園陸上競技場で行なわれた。昨年6月の日本選手権男子800mで史上初めて高校生で制覇を果たしたクレイアーロン竜波(相洋AC)が今回も底力を発揮した。

 クレイアーロンは、この9月からはアメリカのテキサス農工大(テキサスA&M大学)に留学するため、8月中旬の渡米が決まっている。つまり、今回の陸上東京選手権は渡米前の日本で最後のレースだったのだ。結果は、予選と決勝に続いて最初から先頭を走り、ほかの選手を寄せつけない1分50秒54の大会新記録で、見事優勝を飾った。

アメリカ留学前最後の国内大会で、しっかりと結果を残したクレイアーロン竜波「正直、記録よりも順位を狙っていたので、満足のいくレース展開だったと思います。久しぶりのレースを気持ちよく終えることができて、渡米前のいい刺激になりました」

 そう言って、爽やかな笑顔を見せた。

 彼が800mを走り始めたのはわずか5年ほど前のことだ。400mや1500mを走っていた中学2年生の時に顧問の先生から、「800mをやってみてはどうだ」と声をかけられたのがきっかけだった。その後、中学3年で初めて出場した全日本中学校陸上選手権で2位に入り、800mの魅力にハマっていったという。

 この種目は、オープンコースを走る種目では一番短い距離だ。競技中には、位置取りを争って、互いに肘をぶつけ合うこともよくあり、”トラックの格闘技”とも言われる。陸上競技が盛んなヨーロッパでは、もっとも人気のある種目だ。

 日本でもかつては、1964年東京五輪の金メダル候補と言われていた森本葵が世界のトップで戦っていた。しかし、マラソンが重視されるようになってから800mは低迷し、64年に森本が出した1分47秒4の日本記録が次に更新されたのは、29年10カ月後の1993年4月。それを果たした小野友誠は95年世界選手権に出場したものの、五輪には届かなかった。