神野大地は東京マラソン2時間8分台も視野。有言実行の金メダル獲得 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

 神野は、前日にコースの下見をしてきた高木聖也コーチが撮ってきた写真を入念に確認し、アップ&ダウンなどの詳細な情報を得ていた。ゴールには大きなゲートがあり、間違えようがないほど目立つものだったが、リ・ガンボムが自分の前を行くバイクカメラを目印に走っていたようで、車両が左側にアウトしていくと、そのままついていってしまったのだ。

「びっくりしましたね。なんでコースから外れていったのか、さっぱりわからないですけど、これはチャンスだなって思いました。42キロ地点で10秒差あったので、そのままだとたぶん5秒差ぐらいで銀メダルだったと思うんです。でも、コースを間違えて少し差が詰まった。相手が戻ってきた時もまだ3秒差あったんですけど、その時は足も大丈夫だったし『よし、いけるぞっ!』って」

 ラスト150mはスパートのかけ合いになった。神野のペースがアップすると、リ・ガンボムも負けまいとスピードを上げようとした。しかし、もう余力が残っていなかったのか、神野に抜かれるとスピードがガクッと落ち、足が止まってしまった。

「ラストスパートで気持ちと足がピタリとはまりました。だから、スピードが出たんです。気持ちだけあっても足が動かないとリズムが悪くって、スピードは出なくなる。北朝鮮の選手は、まさにそんな感じでした」

 ゴールすると、日本人だけではなく、多くの人が「おめでとう」と声をかけてくれた。ホテルに戻ると、なかには日本語であいさつしてくれる中国人のファンもいたという。

「最後は運ですね」

 神野はそう言って笑った。

 誰も想像しなかったゴール前の出来事。たしかに想定外のラッキーな部分はあったが、それは最後に勝負できるレースをしていた神野の走りがあったからである。42.195キロを考えた堅実な走りで、目標だった「金メダル」を獲得し、テーマだった「勝ちを知る。自信をつける」もクリアした。

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