箱根駅伝で早稲田大が挑むは3位以内。ミトコンドリア効果は武器となるか (2ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Kyodo News

 前回5区17位の大木皓太(4年)はエントリーメンバーから外れたが、今回は吉田が山を駆け上がることになりそうだ。吉田は前回、5区での出場を予定していたが、12月24日に自転車を運転中に乗用車と接触し、左肋骨を骨折。急遽、5区を走ることになった大木は区間17位と苦しみ、チームは往路15位と低迷した。

 相楽監督は学生時代に5区と6区を経験。駒野亮太コーチは5区で区間賞を獲得しており、山のノウハウは十分にある。スピードランナーが揃う一方で、近年の早大は5区でアドバンテージを奪ってきた。「5区吉田」というカードが今回は武器になるかもしれない。

 吉田は3000m障害がメイン種目で、5月の関東インカレでは東海大・阪口竜平(4年)、法政大・青木涼真(4年)に次ぐ3位に入っている。当然、前々回の5区で区間賞をゲットした青木のことは相当意識していたはずだ。本人も「5区を走って、往路をしっかり締めくくりたい」と前回のリベンジを誓っている。

 2区と5区以外の往路は、中谷、千明、井川らが候補か。前回1区4位の中谷は、「希望区間は1区、3区です。前回は中途半端な順位だったので、今回は区間賞を目指します」と力強い。また、1区を熱望する井川は、駅伝シーズンで大活躍中の駒澤大・田澤廉(1年)をライバル視しており、負けるつもりはない。

 11月23日の1万m記録挑戦競技会では、鈴木、太田の弟・直希(2年)、新迫が28分台をマークするなどチームの状態も上向きだ。さらに三上多聞(4年)のように、一般入試からエントリーを勝ち取った選手も復路でのレギュラーを狙っている。

 今季は、「ミトコンドリアを増やす」ことをテーマに取り組んできたという。酸素からエネルギーを作り出すミトコンドリアを増やすことが、持久力アップにつながるからだ。そのために、100mを7割程度の力で50本走るというメニューを月に1回ペースで入れてきた。具体的な数値を計ることはできないが、ミトコンドリア増量トレーニングがどのような効果をもたらすのか、非常に興味深い。

 今大会は東海大、青山学院大、東洋大、駒大、國學院大の"5強"が優勝を争う展開が予想されている。そのなかでチームが目指すは「3位以内」。43年連続88回の出場を誇る早稲田大が伝統の力を見せつける。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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