東京五輪4×100mで金メダル獲得のために、日本は何をすべきか?

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 カタールのドーハで開催された世界陸上選手権9日目、男子4×100mリレー。メダルを期待されていた日本は、これまでの日本記録を0秒17上回る37秒43のアジア新記録を出し、アメリカとイギリスに次ぐ3位でゴールした。

 土江寛裕コーチはレースをこう振り返る。

「37秒4台は絶対に出るし、それが出れば金メダルも見えてくると話して送り出した。記録の面ではうれしかったですが、それでも銅だった。アメリカやイギリスがしっかりバトンパスをしたときは、まだまだ太刀打ちできないなとあらためて感じました」

新しい組み合わせでもアジア新を出し、銅メダルを獲得できた4×100mのメンバー新しい組み合わせでもアジア新を出し、銅メダルを獲得できた4×100mのメンバー ただ、ハイレベルな戦いの中でしっかりメダル圏内に位置していることは証明できた。

 前日の予選では、危機感もあった。ドーハのスタジアムは周囲をすっぽり覆われているドーム型ということもあり、1周すべてが追い風になることも多い。その中で日本は、小池祐貴(住友電工)、白石黄良々(セレスポ)、桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)のオーダーで臨んだが、タイムは37秒78で、「予選は安全バトンということで、受け手側がまだ思い切り(前に)出なかった」(土江コーチ)。

 同じ組では、土江コーチが「しっかり組んできたら強い」と言う南アフリカが世界歴代7位の37秒65で先着し、中国も37秒79。別の組では控えの選手を4走に使ったアメリカがバトンミスで38秒03のギリギリ通過だったが、優勝候補のイギリスは37秒56を出していた。

 決勝では、1走に各国エースが起用された。アメリカは100m優勝のクリスチャン・コールマン、イギリスは200m4位のアダム・ジェミリ、中国は100mで9秒91を持つ蘇炳添を起用。1走から流れを作る編成で、少しでもミスをすればメダルを逃すことも考えられるハイレベルな戦いが予想された。

 それに対して日本は、1走を小池から控えの多田修平(住友電工)に替えた。土江コーチはその理由をこう説明する。

「基本的には、ベストオーダーを組んで決勝まで戦うのがポリシーですが、今回は予選や個人種目を分析して、主力の小池くんが本来の走りをできていないことが数値的にもはっきり出ていたので、今季一番いい動きになっている多田くんに替えました。多田1走、小池2走という組み合わせも考えたのですが、白石くんはデータで、2走のタイムがベストの9秒08くらいということがわかったので、多田と白石でつなぐのがベストだと考えました」

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