神野大地が3つの取り組みで成果。MGC本番へ自信を確信に変えた (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 さらに理想的なフォームで走るために、練習パートナーであるニコラスの存在も大きかった。

「ニコラスの走る姿をうしろから見るとことで、理想のフォームとリズム感を学べたのはすごく大きかったですね」

 ストレスがない練習環境で、きれいなフォームを維持して走ることができるようになった。だがレースは、体がぶつかり合うことが普通に起こる。自分のフォームとリズムを維持しようとしても簡単にはいかない環境にある。

「練習ではパッと自分のフォームに入れるけど、レースでは集団のなかのどこで走ろうかとか、駆け引きするなかでフォームを維持するのはエネルギーがいるんです。それに相手と接触してフォームが崩れると、元に戻すのがすごく難しいんです。そういうことはレースでないと経験できない。だから、スケジュールを変更して深川のレースに、急遽出るようにしたんです」

 そして、3つ目はアップである。神野のアップは大学時代に学んだ"青トレ(青山学院大学駅伝部のトレーニング方法)"がベースになっており、それに改良を加えてきたが、中野ジェームズ修一のトレーニングによって競技レベルが上がったため、"神野大地仕様のアップ"を確立していた。

 今回、新たな取り組みを続けるなか、中野は神野の走りをあらためて分析したうえで、アップのアレンジを始めた。中野は言う。

「神野の場合、立ち上がりのフォームが安定しないんですよ。そこがスムーズに自分のフォームで走れるようになると、レースをコントロールしやすくなるし、どんな展開になっても対応できるようになる。新しいアップは、その動きを出しやすくしています」

 内容的には、心拍数を上げる動き、リズムを取りやすい動きなど、走りのリズムの感覚をつかみやすくなる動作を取り入れている。神野はそのアップメニューをレース前に40分ほど時間をかけてやっている。

 それが功を奏したのか、いいタイムが出た。

「この3つのうち、どれかひとつでも悪い方向に進んでいたら28分32秒というタイムは難しかったと思うんですよ。取り組んできたことは間違っていなかったし、練習の積み重ねで実現できるようになった。全体がかみ合ってきたのかなと思いましたね」

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