「俺はまだ速いぞ」桐生祥秀は闘争心をごうごうと燃やしている (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao/Photo Kishimoto

 桐生は、大会前日の記者会見では「予選と準決勝は理想で言えば、流して10秒1台や0台で通過したい」と話していたが、調子が上がらないまま決勝を迎えることになり、若干の不安を残していた。

 だが、桐生は想定外の状況になっても、しっかり自分の足下を見つめていた。もちろん2014年以来、逃し続けている全日本選手権のタイトルを獲りたい気持ちはあっただろうが、自分の状態とサニブラウンの走りを見て「今できる最大の事をしよう」と気持ちを切り替えていたのだ。

「世界へ行けば予選も準決勝も大事だけど、日本選手権ではいつも準決勝でいい走りができると『よかったな』と思ってしまう。今回はそういうのは一切なかった。準決勝では小池さんに負けていましたが、その日の(最高の)走りをしようと思ったし、決勝では負けていられないと思ったので集中できた。サニブラウン選手に勝てなかったというのは悔しいし、2位でホッとしたというのはないけど、いろいろ考えて決勝を走れたというのは自分の心の中では成長だと思っています」

 サニブラウンに0秒14離される結果だったが、優勝タイムは10秒02で「タイム的にはまだ負けてない」という気持ちにもなったと振り返る。課題は、今季のテーマにしている後半で突き放されたところで、世界と戦うこと。それを考えると「もっと成長していきたい」と話した。

「今回(世界選手権出場の)内定を決められなかったので、しっかりポイントを取って世界ランキングを上げていかなければいけない。これからヨーロッパに行き、強い選手たちと走る中で狙って9秒台を出し、『俺はまだ速いぞ』というのをファンに見せつけたいと思います」

 こう語った桐生にとって、今回の敗戦は強くなりたいという意識をより強くさせるものになったと言える。

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