リオの銀から2年。日本スプリント勢が再び輝くには飯塚翔太が必要だ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 2010年世界ジュニア200mで日本初の優勝を果たして以来、12年ロンドン五輪や世界選手権の代表になり、4×100mリレーの主力選手になった飯塚だが、15年には右ハムストリングの肉離れという大きなケガを経験した。その影響もあって16年からは前半をコンパクトな走りに変えていた。

「ケガをしてからは、大きな動きへの怖さもあり、ピッチ(足の回転数)を意識したコンパクトな動きをするしかないと思っていました。僕の場合、走りを変えられるというのが、メリットでありデメリットでもあるんです。その走りだと条件がいい時は20秒11までいけましたが、調子によるタイム差が激しすぎるんですよね。練習でもストライドの大きな走りをすれば同じタイムで何本もいけるんですが、ピッチを意識すると同じように走れないので、それと同じだと思います」

 そんなコンパクトな走りから、大きな走りへと変えるべく、シーズンオフに入ってからは、自分の弱点である上半身強化に取り組んでいる。

「下半身の強さには自信があるけど、上半身は恥ずかしくて人には言えないくらい弱い。身長も186cmあるのに、170~175cmの人と同じくらいのパワーしか出せないんです」と苦笑する。

 ただ、そう言いながらも、今取り組んでいる上半身強化の成果は徐々に現れてきている。

「フォームも上半身を強化して、これまで振れていなかった腕をしっかり振るようにするという程度ですが、この冬はスピードを上げた練習に取り組み始めました。これまでは、ケガを恐れてあまりスピードを上げずに8割くらいの感覚で終わるようにしていて、試合だけ全力だったんです。

 でも今は、週3回くらい全力で走る練習を入れたり、常にスピードを求める練習を計画的にやっているので、前半の走りも自然に大きくなっていると思います。2月から1カ月間メキシコで行なった高地合宿では、気圧が低い中でスピードを求めるものだったので、その時の動きを大事にしてやるようにしています」

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