強力2トップの東海大。全日本大学駅伝に向け「長距離化」は進んだか (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by Kyodo News


「レースへの不安はないです。あとは体調を崩さないようにするだけですね。昨年、油断があったかどうかはわからないですが、結果的にそう見られてもしょうがない状況だった。今年は足元をすくわれないように基本的なことからしっかりやって、万全の状態でスタートラインに立てればと思っています。とりあえず手洗い、うがいは徹底してやっています。あと、キムチをよく食べています」

 そう言って笑顔を見せた。その表情を見て、ふと思ったのだがテレビドラマ『陸王』に出演している竹内涼真に何となく似ている。關は「いやいや」と苦笑して否定していたが、背格好も同じだ。もともと關は鬼塚とともに人気があり、出雲の表彰式後もサインや写真撮影を求める大勢のファンが列をなしていた。「鬼塚の人気がすごくて、僕は鬼塚のついででくる感じです」と關は謙遜するが、出雲路をアンカーとして快走した勇姿は多くのファンを生んだはずだ。それに元々注目されるのが嫌いじゃないタイプでもある。

「そうですね(笑)。注目され、応援されることは自分を見失うことがなければ、いいことだと思います。アンカーを志望したのは注目されたい気持ちも多少あったので(笑)」

 実力も人気も急上昇中の東海大にあって、關と鬼塚の2トップは、まだまだ強烈だ。全日本でも彼らがレースを作ってくれるはずだ。

「自分は前半の主要区間で走って、しっかり流れを作りたい。青学大も強いと思いますけど、全日本は自分たちも十分に戦えるので自信を持って挑みたいと思います」

 初めて走る伊勢路、1年前の悔しさを晴らす時が、ついにやってくる。
 
 練習が終わり、昼食を食べるために選手が散開した。チームは、31日に滋賀県に移動して合宿に入り、大会前日に2グループに分かれて大会現地に入る。果たして全日本は、どういうレースになるのか。

「うちはスピードだけだって言われるけど、スピードがあれば押し切ることもできる。実際、塩澤は長い距離を走っているわけじゃないですけど、しっかり10kmを走れている。スピードを磨いて、作り上げてきたものを武器にして10km以上の距離にも対応してきた。そこで距離を踏んできた青学さんと、どう渡り合えるか、ですね。それが試されるのが全日本です」

 西出コーチは"楽しみです"と言わんばかりの表情を見せた。

 一度味わった勝利の味は、再び勝たないかぎり味わえない。そこにどれだけ貪欲になれるか。「黄金時代の到来」という本物の風を陸上界に吹かせるためには、全日本は譲れないタイトルである。
 

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